壬戌丸

壬戌丸（じんじゅつまる）についての詳細

壬戌丸は、江戸時代末期、つまり幕末に活動していた長州藩の軍艦で、蒸気スクリュー船という形式の船です。元々は「ランスフィールド」という名称で知られ、1855年にイギリスのグラスゴーで建造されました。この船は、インドと中国の間で商取引を行うために使用され、ジャーディン・マセソン商会に属していました。

船の基本情報

壬戌丸のトン数は448トンで、純トン数と総トン数もそれぞれ448トン及び605トンと明記されています。長さは235.4フィート（約71.7メートル）、幅は30.8フィート（約9.4メートル）、出力は300馬力です。また、備砲としては2門を備えていました。

購入の経緯

「ランスフィールド」はトーマス・ブレーク・グラバーという長崎のイギリス人商人によって注目を集め、その売却に関して1862年1月に問い合わせが行われました。しかし、薩摩藩との売却交渉はすれ違いがあり頓挫しました。最終的には長州藩がその年の干支に因んで「壬戌丸」と名付け、洋銀15000ドルで購入しました。

当初、指揮官や乗組員はイギリス人が雇用されていましたが、後に毛利家の人員に置き換えられつつも、イギリス人も一部残されていました。しかし、攘夷の動きが強まる中、外国人の乗組みに対する反発が生じ、彼らは解雇されました。その代わりとして、高木三郎を招いて機関学を教え、幕府の船の火夫を雇うなどして船の運行が試みられました。

運用と航海

壬戌丸は、長崎から品川を経て萩へと航海しましたが、その航海中、ボイラーの劣化から蒸気漏れが多発し、萩到着後は恵美須ヶ鼻造船所で修理に出されました。文久3年5月からは外国艦船に対する攻撃活動が開始されましたが、「壬戌丸」はその戦闘に直接関与することはありませんでした。

5月末には戦況を視察するために毛利定広を乗せるために下関へ航行しましたが、悲運にもアメリカの艦船「ワイオミング」に攻撃されて撃沈されてしまいます。6月17日には引き揚げを試みるも失敗し、7月には引き揚げ命令が下され、11月にはようやく引き揚げに成功しました。

その後、「壬戌丸」は再び萩へ戻り、修理が行われましたが、第二次長州征伐に備える中で困難な状況が続きました。最終的にアメリカ商人ドレイクが35000ドルで買い取る契約を結び、ゲベール銃を輸入する計画が進められましたが、この出来事は当時の政治状況にも影響を与えました。

壊滅とその後の運命

「壬戌丸」は売却後に何度か修理を受けましたが、最終的には廃船となったと考えられています。この艦船の歴史は、幕末の政治的な動乱や国際関係を色濃く反映しており、その運命は波乱に満ちたものでした。長州藩の海軍力の一端を担った壬戌丸の存在は、今なお幕末の歴史を探る上で重要な要素となっています。

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