声帯

声帯の概要

声帯（せいたい、英：Vocal cordsまたはVocal folds）は、脊椎動物の喉頭の前部に位置し、主に音声の発生を担う器官です。特にヒトにおいては、声帯の運動が発音に直接影響を与えています。声帯は左右対称の2つの折りたたみ構造からなり、その間には声門裂と呼ばれる隙間があります。この隙間を通る空気が声帯を振動させ、音を生成します。また、鳥類の声帯と異なり、人間の声帯は肺と直接接続されており、発声時に特有の運動を伴います。

音声の発生メカニズム

声帯の運動を支える神経は第X脳神経に属し、その中の反回神経が重要な役割を果たします。この神経は、喉頭の運動を調整し、呼吸や発声を可能にします。右側と左側で異なる経路を持つ反回神経は、特に手術などで損傷を受けることがあり、その結果、様々な声帯関連の疾患を引き起こす可能性があります。

声帯関連の疾患

声帯ポリープ

声帯ポリープは、声帯に対する過度の物理的刺激が原因で発生します。例えば、大声を繰り返し上げたり歌い続けることで、声帯上皮が異常に増殖しポリープを形成します。この状態では、声帯の負担を軽減させることにより自然と治癒することもありますが、重度の場合は外科的治療が必要になることがあります。

反回神経麻痺

反回神経の損傷は、胸部や頚部の手術後に起こることが多く、この神経の機能障害は声帯の動きに影響を与え、特に喉頭の運動を妨げます。この状態は反回神経麻痺と呼ばれ、一側の麻痺では嗄声が生じ、両側が麻痺すると呼吸困難に至ることがあります。後者の場合には、気管内挿管や気管切開が必要になることがあります。

喉頭癌

喉頭癌は声帯を含む喉頭の上皮に形成される悪性腫瘍であり、進行した場合には喉頭全摘出手術が必要となります。この手術後は、発声が不可能となるため、患者は人工喉頭や食道発声法を用いて音声の代替を図る必要が出てきます。

声帯溝症

声帯溝症は声帯に皺状の溝が生じることで発声に問題をきたします。この病態では声門が閉じきらず、名前の通り声帯の閉鎖不全が発生します。この結果、発声が短くなり、音質が劣化し、また「力が入らない」状態や誤嚥なども引き起こすことが多いです。

声帯のモデル

声帯の機能を理解するために、様々なモデルが提唱されています。例えば、Cover-Bodyモデルは声帯の表層と深層の弾性を考慮した構造です。また、2質量モデルは声帯が喉側と肺側に分かれて働くことを示すモデルで、実験的にも声帯の自励振動を説明するのに役立てられています。これらのモデルは、声帯の物理的特性や機能を理解し、医療の現場での応用にも寄与しています。

参考文献

特定の文献を引用することにより、声帯の運動や発声メカニズム、疾患、モデルについての詳細な学術情報を得ることが可能です。石坂謙三の研究など、声帯に関する専門的な文献も多く存在しています。これらは音声言語医学の理解を深めるために重要な資料です。

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