売茶翁

売茶翁（ばいさおう）について

売茶翁（1684年 - 1763年）は、江戸時代において黄檗宗の僧侶として煎茶の普及に大きく貢献した人物です。本名は柴山元昭で、幼少期は菊泉という名で知られていました。彼の法名は月海であり、還俗後は高遊外（こうゆうがい）と名乗りました。

生い立ちと修行

佐賀県佐賀市の蓮池町に誕生した売茶翁。父・柴山杢之進は藩主・鍋島家に仕える御殿医であり、母はみやです。11歳の時に出家し、佐賀の龍津寺で化霖禅師のもとで禅を学び始めました。13歳の頃、師と共に宇治の黄檗山萬福寺を訪れ、独湛禅師から偈を受けるなど、若い頃から異才を発揮していました。

22歳の時、病気をきっかけに全国各地の名僧のもとを訪れ、自身の教養を深めるため励んでいました。特に湛堂律師からは律について教えを受け、雷山では厳しい修行を行いました。その後、龍津寺に帰り、14年間化霖禅師に仕えましたが、57歳で師が亡くなると、突然龍津寺を去り京都へ移ります。

煎茶の普及と生活

61歳で通仙亭を開設し、喫茶の場を設けました。彼は茶道具を持参し、訪れる客に煎茶を振る舞いながら、禅道と世俗の相互作用について話題を提供しました。売茶翁はこの活動を通じて、一般人と禅を結び付けることに注力し、形式的な茶道や宗教の在り方に対する疑問を呈しました。また、俳人・大典顕常と知り合った際、自身の考え方を書き残すように言われたことから、遂には彼が執筆することになります。

65歳の時、法度に従い故郷に戻り、還俗の許可を得て高氏を称しました。それ以降も「売茶翁」と呼ばれながら、貧ry中であっても茶を売り続け、そんな生活を貫いたのです。また、茶道具についてはその価値観から焼却してしまうといった厳しい選択をする場面もありました。

81歳の時、売茶翁は業務を廃業。生きた証でもある茶道具を焼却し、仏教の教えを重んじる姿勢を示しました。のち、87歳で幻々庵にて息を引き取り、長い生涯を終えました。

売茶翁の思想と影響

彼の行動は、当時の禅僧に対する反発や、真の禅実践を求めたものと捉えられています。17世紀の寺請制度により、禅僧の生活は安定しましたが、売茶翁はそれを批判し、茶道の本質を大切にしようとしたのです。彼は、煎茶の普及を通じて、禅や茶道における精神的な価値の復興を目指したとされています。

関連資料

売茶翁を語るための著作も存在し、相国寺での親しい関係にあった大典顕常による『売茶翁伝』や、伊藤若冲の肖像画が伝わるなど、彼の影響は大きいものとなりました。また、善き友人たちによる作品や展示も多数行われています。

このように、売茶翁は煎茶の普及を通して、禅の教えと世俗の生活との調和を追求し続けた重要な人物でありました。

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