黄檗宗

黄檗宗の概要

黄檗宗（おうばくしゅう）は、日本の禅宗の一派であり、江戸時代初期に中国から伝来したものです。この宗派は、明朝復興の願いを背負っており、隠元隆琦（1592 - 1673年）という僧がその創始者とされています。主な寺院は、隠元が開いた黄檗山萬福寺（京都府宇治市）で、この寺院が黄檗宗の本山となっています。

名称の由来と教義

黄檗宗の名前は、中国の僧である黄檗希運に由来しています。この宗派の教義や修行方法は、日本の臨済宗とは同様のものであるとされていますが、黄檗宗独自の宗風があります。その独自性は、定期的に中国禅を取り入れた日本臨済宗の発展とは異なり、隠元の来日が比較的新しく、また明末清初において中国禅の正統性を主張した点にあるとされています。黄檗僧たちは、近世中国文化を伝える一方、医学や社会福祉にも力を注ぎました。

歴史的背景

江戸時代の初期、特に元和から寛永（1615年 - 1644年）の頃、明朝の混乱から多くの中国人が日本に渡ってきました。特に福州出身の人々により、長崎に興福寺、福済寺、崇福寺の三つの寺院が設立され、ここに多くの明朝の僧が招聘されました。

黄檗宗の創始

承応3年（1654年）、隠元隆琦が日本に到来し、その教えを広めることになります。隠元の禅は、過去の日本臨済宗の祖である円爾や無学祖元といった文脈で継承されており、最初は臨済正宗や臨済禅宗黄檗派を名乗っていました。この宗派は、明代の中国禅の特徴を持ち、さまざまな宗教的要素を取り入れた混淆禅の形態を持ちます。

隆盛の時代

黄檗宗は、幕府の保護を受け、大名たちの支持を得て発展しました。また、鉄眼道光（1630 - 1682年）などの僧侶は社会的な事業を通じて教化を推進しました。1740年には、和僧の龍統元棟が住職に就任し、以後も中国から住職を招く伝統が続きました。この結果、萬福寺からは多くの分院が設立され、1745年には1043の末寺が存在することが記録されています。

明治以降の変遷

明治政府の教部省によって、初めは「臨済宗黄檗派」と改称されたものの、1876年に正式に黄檗宗として独立することとなりました。その後、臨済宗とは共同で財団法人の運営を行い、公式なウェブサイトも設けるなど、現代においても両者の関係は続いています。

鉄眼一切経と文化的貢献

隠元の法孫である鉄眼道光は、隠元の影響を受けた明版大蔵経を基に、黄檗版の一切経を刊行しました。この一切経の出版は、日本の仏教研究と出版技術の発展に寄与しました。また、了翁道覚は、薬品販売によってこの事業を支援し、全国に勧学院という図書館の先駆けを建立しました。その後、鉄眼一切経は重要文化財に指定され、現在も萬福寺内の宝蔵院で摺り続けられています。

黄檗唐音と文化の伝承

黄檗宗では、経典の読経が近世中国語の発音で行われており、これを「黄檗唐韻（とういん）」と呼んでいます。このように、黄檗宗は中国文化の影響を強く受けており、日本の仏教界に独自のカラーを確立してきました。現在も、その教えや文化は多くの人々に受け継がれています。

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