夏の思い出

夏の思い出

「夏の思い出」は、作詞：江間章子、作曲：中田喜直による日本の歌曲です。NHKのラジオ番組から生まれ、尾瀬の情景を美しく描き出した歌詞と、心に染み入るメロディーで、多くの人々に愛され続けています。

誕生の背景

この曲は、NHKからの依頼で制作されました。作詞を担当した江間章子は、幼少期にミズバショウが咲く岩手山の近くで育ち、1944年に尾瀬を訪れた際、一面に咲き誇るミズバショウに心を奪われたと言います。戦後間もない1947年、NHKから依頼を受け、尾瀬での感動を詩にしたのが「夏の思い出」です。

作曲者の中田喜直は、依頼を受けた時点で作詞者の江間章子と面識はなく、尾瀬にも行ったことがありませんでした。初めて尾瀬を訪れたのは、作曲から約40年後の1990年のことでした。曲は比較的簡単に完成しましたが、母親から「お粗末だ」と指摘され、作り直したものが現在の「夏の思い出」として知られています。

リリースの反響

1949年6月13日にNHKのラジオ番組『ラジオ歌謡』で石井好子の歌唱で放送されると、その美しさから多くの日本人の心を掴みました。特に、歌に登場する尾瀬は一躍人気となり、多くの人々が訪れるようになりました。石井好子の歌唱は当時レコード化されませんでしたが、1954年には藤山一郎によって初めてレコードが発売されました。

1962年には、NHKの『みんなのうた』でも紹介され、高木淑子とヴォーチェ・アンジェリカが歌唱を担当しました。これにより、「夏の思い出」はさらに幅広い世代に知られるようになり、日本の歌謡史における重要な位置を確立しました。

楽曲の特徴と影響

「夏の思い出」は、中学校学習指導要領にも「長く歌われ親しまれている歌曲」として挙げられており、音楽の教科書にも掲載されています。そのため、幅広い世代に親しまれており、合唱版やピアノ独奏版など、さまざまなアレンジが存在します。2006年には、文化庁と日本PTA全国協議会によって「日本の歌百選」にも選定されました。

歌詞に登場するミズバショウは、実際には5月末に咲く花であり、尾瀬の春の風物詩です。しかし、江間章子は「尾瀬においてミズバショウが最も見事な5、6月を私は夏とよぶ、それは歳時記の影響だと思う」と述べています。文学的な表現と実際の季節とのずれも、この歌の魅力の一つと言えるでしょう。

エピソード

作曲者の中田喜直は、母親からの助言で曲を書き直したというエピソードがあります。また、清水ミチコが曲調をアレンジしたハトヤホテルのCMソングをネタにしていることや、東芝がかつて替え歌をCMに使用していたことなど、さまざまなエピソードが存在します。

川越線武蔵高萩駅の発車メロディーとしても使用されていましたが、現在は使われていません。また、「みんなのうた」版は長らく再放送されていませんでしたが、2023年にラジオで再放送され、再び注目を集めました。

外部リンク

夏の思い出 - 名曲アルバム - NHK
夏の思い出 - YouTube（歌：山野さと子）

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