夏見御厨

夏見御厨（なつみのみくりや）

夏見御厨は、中世に現在の千葉県船橋市南部から中央部にかけて広がっていた荘園です。具体的には、海老川流域を中心とした地域に位置していました。この荘園は「御厨（みくりや）」と呼ばれており、これは皇室、伊勢神宮、下鴨神社といった特定の権力者の領地を意味します。夏見御厨は、伊勢神宮の神領であり、船橋御厨とも呼ばれることがあります。

概要

夏見御厨に関する歴史的な資料は非常に少なく、その詳細についてはまだ不明な点が多いのが現状です。一説には、『延喜式』兵部省式に登場する下総国・大結馬牧（おおいのうままき）がその前身であるという説も存在します。この大結馬牧は、当時、朝廷の軍馬を供給する重要な牧場でした。

夏見御厨が成立した経緯についても、正確なことはわかっていません。一般的には、千葉氏一族の荘園であったと考えられていますが、実際には誰が開発し、伊勢神宮に寄進したのかは明確にはなっていません。有力な説としては、この地域の有力者が自らの領地を伊勢神宮に寄進し、その庇護下に入ったというものがあります。寄進は、その土地を荘園として守り、同時に権力者の影響力を背景に、より安定した経営を行うための有力な手段でした。

1138年（天治4年）には、夏見御厨が立券されたという記録が残っています。また、『吾妻鏡』には、1186年（文治2年）の記述に「院御領船橋身御厨」という文言が見られます。このことから、夏見御厨は一時的に後白河院の領地となった時期があったことがわかります。後白河院は、院政期における政治的な実力者であり、多くの荘園を支配下に置いていました。

御厨は、室町時代までその存在が確認されており、長い期間にわたって地域に影響を与えたと考えられています。船橋大神宮が所蔵する1311年（応長元年）の文書には、湊郷、夏見郷、金曾木郷、宮本郷、高根郷という5つの郷が記されています。これらの郷は、夏見御厨を構成する重要な地域であり、それぞれが独自の役割を担っていたと考えられます。

まとめ

夏見御厨は、中世の船橋地域における重要な荘園であり、伊勢神宮の神領としてその歴史を刻みました。その成立過程は謎に包まれていますが、歴史的な記録を紐解くことで、その一部を垣間見ることができます。資料が限られているため、いまだ不明な点が多いものの、今後の研究によって、その実態がさらに解明されることが期待されます。

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