御厨

御厨（みくり）についての詳しい解説

御厨（みくり、みくりや）は、古くから神様に供える神饌を調理するための場所や、神饌を調進するための領地を指す言葉です。その語源は「御」（神の）と「厨」（台所）に由来しており、本来の意味は、神様のために料理を作るための屋舎を指しています。また、御厨は「御園（みその）」とも呼ばれることがあります。

御厨の概要

この用語は、単に神饌を調理するための建物にとどまらず、実際に神饌を供えるための土地や、神社に直接関係する生産地を表すことでもあります。特に、村や地域の生産者が神人としてその土地に属していたことが多く、地域の農民や漁民たちが神社のために作物や魚を捧げていました。

日本の神社は、神田（神社の田）や神郡、さらには神戸（神社の境内に近い集落）などの領地を有していましたが、平安時代中期に入ると荘園制度が発達し、神社も権禰宜によって、自らの土地で生産された特産品を提供することで神税を免除される「御厨」や「御園」と名付けられた荘園を持つようになりました。

その後、武士たちからの寄進にともなって、さまざまな地域に「御厨」や「御園」が増えていくこととなります。

中世における御厨の発展

中世日本では、皇室や伊勢[[神宮]]、賀茂神社などの有力な神社が多くの荘園（神領）を持つようになり、その名称は地名や名字としても残ることとなりました。鎌倉時代には、日本各地で約500か所に及ぶ「御厨」が存在し、特に関東地方では相馬御厨や大庭御厨が源義朝による襲撃で有名です。

この時代、武士団による略奪や押領（自らの領土としての奪い取り）が頻繁に行われ、神社の土地も多くが危険にさらされました。これにより、神社は生き残りをかけて多くの困難に直面しました。

主要な御厨の例

• - 阿射賀御厨（伊勢国）
• - 大庭御厨（相模国）
• - 榛谷御厨（武蔵国）
• - 東条御厨（安房国）
• - 丸御厨（安房国）
• - 相馬御厨（下総国）
• - 夏見御厨（下総国）
• - 葛西御厨（下総国）
• - 筑摩御厨（近江国）
• - 中河御厨（美濃国）
• - 矢原御厨（信濃国）
• - 簗田御厨（下野国）

現代における御厨

現在、日本各地には「御厨」を冠する地名が残っており、群馬県桐生市や大阪府東大阪市、長野県長野市などで見られます。また、長崎県松浦市と静岡県磐田市には「御厨駅」と名付けられた駅も存在します。

さらに、過去には「御厨」を名乗る自治体も存在しており、現在は次のような地域が該当します。

• - 栃木県足利郡御厨町（現 足利市）
• - 静岡県駿東郡御厨町（改称して御殿場町、現 御殿場市）
• - 長崎県北松浦郡新御厨町（現 松浦市）
• - 静岡県磐田郡南御厨村（現 磐田市）

御厨は日本の歴史と文化に深く根ざした概念であり、その名残は今でも多くの地名や文化に受け継がれています。

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