夕張バス

夕張バス

夕張バス（ゆうばりバス） は、かつて北海道夕張市を拠点にバス事業を展開していた事業者です。北海道炭礦汽船（北炭）の関連会社として設立され、夕張市内の移動手段や、市外へのアクセスを担いましたが、後に同じ北炭系列の夕張鉄道に統合されました。

概要

夕張バスの歴史は、1950年（昭和25年）3月に夕張乗合自動車株式会社として設立されたことに遡ります。発足当初は道南バス株式会社からの出資を得ていましたが、同年4月1日には夕張鉱業所と若菜の間でバス2台による営業を開始しました。その後、夕張市内の主要路線、特に丁未から若菜にかけてのルートを中心に、道路整備の進捗に合わせて路線網を拡大していきました。具体的には、1951年（昭和26年）4月11日には若菜と清水沢川向（現在の清陵町付近）を結ぶ運行が始まり、1953年（昭和28年）6月8日には清水沢から南部（南大夕張）までの区間で1日6往復の運行が開始されるなど、着実に事業を展開しました。

1954年（昭和29年）5月には、本社機能を若菜に移転しました。事業の転機となったのは、1956年（昭和31年）7月に親会社である北海道炭礦汽船からの出資を得て、夕張バス株式会社へと社名を改称したことです。この改称を機に、長距離路線の開設にも意欲を示し始めました。同年8月29日には、札幌と夕張を結ぶ急行バス路線の免許を取得。同年9月17日からは、沼ノ沢から紅葉山、さらには登川や滝の上方面への運行も開始し、夕張市域外へのアクセス網も整備していきました。

札幌急行線は、1960年（昭和35年）頃には1日2往復運行されており、当時のバスとしては珍しいリクライニングシートを備えた車両が使用されるなど、快適性を重視したサービスが提供されていました。夕張市内の運行も活発で、同年には丁未〜若菜線が1日95往復、若菜〜清水沢線が40往復運行されていました。

長距離バス路線の拡充は続き、1961年（昭和36年）6月3日には清水沢から札幌を結ぶ清水沢急行線が開業しました。翌1962年（昭和37年）10月7日には、三菱鉱業バスとの協定に基づき、夕張駅から大夕張駅前を結ぶ大夕張急行バスの運行も開始されました。この路線では、夕張バスが1日8往復、三菱鉱業バスが7往復を担当し、炭鉱で栄えた大夕張地区への重要な交通手段の一翼を担いました。

夕張バスの車両は、水色を基調とし、赤とクリーム色のラインを配した特徴的な塗色でした。このカラーリングは、後に夕張鉄道に合併された後も一部の車両で引き継がれ、1970年代頃まで見ることができたと言われています。本社および車庫は夕張市若菜に設置されており、この場所は後の夕張鉄道バスの若菜ターミナルとして活用されました。

夕張鉄道への統合

しかし、夕張バスの単独事業者としての歴史は比較的短いものでした。設立からわずか13年後の1963年（昭和38年）10月1日、同じ北海道炭礦汽船系列の鉄道・バス事業者である夕張鉄道株式会社に吸収合併される形で、その事業は終焉を迎えました。合併直前の同年8月には、札幌急行線が1日3往復に増強されるなど、事業規模の拡大も図られていましたが、グループ内での効率化や事業再編の一環として統合が実施されたと考えられます。夕張バスは短い活動期間ながら、炭鉱の町として賑わった時代の夕張において、地域住民の日常的な移動や、都市部との連絡手段として重要な役割を果たしました。

参考文献等

写真・満田新一郎 文・三好好三 福川博英『続・昭和30年代バス黄金時代』（JTBパブリッシング 2006年）
『増補改訂 夕張市史』下巻（夕張市史編さん委員会編/夕張市役所発行 1981年）
『バス時刻表』（夕張バス株式会社 1960年）

関連項目

夕張鉄道

もう一度検索