札幌急行線

かつて夕張市と札幌市を結んでいた急行バス路線で、主に夕張鉄道（夕鉄バス）によって運行されていました。この路線の歴史は、1950年（昭和25年）に設立された夕張乗合自動車（夕張バス）に遡ります。

夕張バスは当初、夕張市内の路線を運行していましたが、道路工事に伴う迂回運転による減収や、車庫の損壊・焼失といった災害が重なり、その経営は非常に厳しい状況に置かれていました。一方、この時期には道路舗装が進み、長距離バスの運行が可能になったことから、夕張バスは長年の念願であった札幌への急行バス路線運行を計画し、1955年（昭和30年）9月に申請を行いました。

この札幌行路線の運行権獲得には、夕張乗合自動車のほか、既存の夕張鉄道（夕鉄バス）、北海道中央バス、国鉄バスといった四者が競願する形となり、その認可の行方は不透明でした。しかし、翌1956年（昭和31年）9月、夕張バスは北海道中央バスとともに運行認可を得ることができました。この認可に至るまでには、夕張バスは資本増強や商号変更といった準備を進めています。

運行開始後、路線は段階的に増便され、1961年（昭和36年）6月には清水沢駅前からの1往復が増設され、1963年（昭和38年）8月には合計3往復となりました。同年10月1日には、夕張バスは夕張鉄道に吸収合併され、札幌急行線の運行は夕鉄バスに引き継がれました。

夕鉄バスによる運行が続くとともに、中央バスや三菱鉱業バス（後の美鉄バス）の路線も加わり、1971年（昭和46年）には夕張～札幌間の総旅客数が約83万7千人に達するなど、両市間の重要な交通手段としての役割を果たしました。1978年（昭和53年）9月時点では、清水沢駅前を始め、丁未、清陵町、大夕張、真谷地など複数の発着地から、計9往復が運行されていました。

しかし、夕張市の経済基盤である炭鉱の閉山が進み、市勢が衰退するのに伴い、バス路線の旅客数も減少傾向をたどります。2007年（平成19年）には、中央バスの路線を含めた夕張～札幌間の総旅客数は約11万人にまで落ち込みました。

運行区間も時代の変化に合わせて変更されました。札幌市内では長らく中心部の札幌大通（西3丁目）に乗り入れていましたが、2006年（平成18年）5月1日には大谷地ターミナル発着に短縮され、2009年（平成21年）10月1日からは新さっぽろ駅前が札幌側の新たな発着地となりました。夕張側の発着地も、2009年（平成21年）10月1日に夕鉄本社ターミナルに集約された後、2015年（平成27年）10月1日には南清水沢駅前まで延長され、最終的には2020年（令和2年）3月1日の夕張市交通拠点等複合施設「りすた」の供用開始に伴い、「りすた」発着となりました。また、栗山駅を発着する系統も運行されていましたが、こちらは2017年（平成29年）10月1日に廃止されています。

廃止直前の2021年（令和3年）10月1日改正時点の主要系統は、「りすた」から新札幌バスターミナル（新さっぽろ駅）を結んでおり、所要時間は約1時間43分、平日は4往復、土休日は3往復運行されていました。経路の大部分は北海道道3号札幌夕張線を経由していました。

最繁忙期には臨時便も設定されており、特にゆうばり国際ファンタスティック映画祭開催期間中には、関連する臨時便が運行されることもありました。

札幌急行線では、停留所相互間での小荷物輸送サービスが行われていたほか、夕鉄本社ターミナルでは利用者向けのパーク＆ライド駐車場が提供され、夕張市内線への乗り継ぎ割引や、遅延時の市内線接続待ちといった利便性向上の取り組みも行われていました。

旅客減少と利用状況の変化を受け、夕張鉄道は2023年3月、札幌急行線を含む複数路線の廃止方針を表明しました。そして同年8月に、札幌急行線が2023年10月1日をもって廃止されることが正式に決定し、長年にわたる歴史に幕を下ろしました。廃止後、北海道中央バスの「高速ゆうばり号」が一部バス停を新設するなどして、夕鉄バスの代替機能を一部担うこととなりました。

札幌急行線とは別に、夕張市内と札幌市を栗山町などを経由して結ぶ夕鉄バスの別系統も運行されていましたが、こちらも札幌急行線と同日の2023年10月1日に夕張市内～南幌間の区間が廃止されています。

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