外側鼻動脈

外側鼻動脈

外側鼻動脈（がいそくびどうみゃく、英語: lateral nasal branch of facial artery）は、ヒトの頭頸部に存在する血管の一つであり、顔面部に血液を供給する主要な動脈である顔面動脈（がんめんどうみゃく）の重要な枝として知られています。この動脈は、顔面動脈が顎角部を乗り越えて顔面に現れた後、口角付近で分岐することが一般的です。分岐した外側鼻動脈は、鼻の側面に沿って上向きに走行します。

走行と位置

外側鼻動脈は、顔面動脈から分岐した後、鼻の外側に沿って皮下を上行します。その走行経路は、鼻唇溝（ほうれい線）の近くを通り、鼻の側面を上りながら鼻尖部（びせんぶ：鼻の先端）へと向かいます。しばしば、鼻翼の外側を通って上方へと進み、鼻背（びはい：鼻筋）の領域に達します。この血管の走行は比較的浅いため、顔面の解剖において重要な目印の一つとなります。

栄養供給領域

外側鼻動脈の主な役割は、鼻の特定の部位に血液を供給することです。この動脈は、主に以下の領域に栄養豊富な血液を送っています。

鼻翼（びよく）: 鼻の先端部の丸みを帯びた両側の部分。外側鼻動脈は、この鼻翼の皮膚や内部組織に血液を供給します。
鼻背（びはい）: 鼻筋にあたる部分、すなわち鼻の付け根から鼻尖にかけての背側の領域。外側鼻動脈はこの領域の一部にも血液を供給します。

これらの部位は顔面の中心部であり、その機能や外見において外側鼻動脈からの血液供給は非常に重要です。

吻合関係

外側鼻動脈は、その走行経路において周囲の複数の血管と吻合（ふんごう：血管同士が結合し、ネットワークを形成すること）しています。この吻合ネットワークは、顔面部の複雑な血管網の一部を構成しており、特定の血管が損傷したり閉塞したりした場合に、他の血管からの血液供給を確保する側副血行路（そくふくけっこうろ）としての役割を果たす可能性があります。外側鼻動脈が吻合する主な血管は以下の通りです。

1. 反対側の外側鼻動脈: 鼻背部などで、反対側の外側鼻動脈と吻合し、鼻の背側で血管のループを形成することがあります。
2. 上唇動脈の枝: 顔面動脈の枝である上唇動脈（じょうしんどうみゃく）から分かれる鼻中隔枝（びちゅうかくし）や鼻翼枝（びよくし）とも吻合します。これらの枝は鼻中隔や鼻翼の内部に分布しており、外側鼻動脈と連携してこれらの部位に血液を供給します。
3. 眼動脈の枝である鼻背動脈: 眼窩（がんか：眼球が存在するくぼみ）の構造物に血液を供給する眼動脈（がんどうみゃく）の枝である鼻背動脈（びはいどうみゃく）とも吻合します。この吻合は鼻根部（びこんぶ：鼻の付け根）付近で起こり、顔面動脈系と内頸動脈系（眼動脈は内頸動脈の枝）との間の重要な連絡路となります。
4. 顎動脈の枝である眼窩下動脈: 上顎部や頬部に血液を供給する顎動脈（がくどうみゃく）の枝である眼窩下動脈（がんかかどうみゃく）とも吻合します。眼窩下動脈は眼窩の下縁から出て顔面に分布しており、外側鼻動脈との吻合を通じて顔面中部の血管網を形成します。

これらの多様な吻合は、鼻やその周辺領域への安定した血液供給を支えるとともに、出血や血管閉塞などの際に代替経路を提供する重要な機能を持っています。

外側鼻動脈は、顔面の血管解剖において比較的小さな血管ではありますが、鼻の外観や機能に関わる部位への血流を担い、さらに顔面や眼窩、上顎部を栄養する他の主要な動脈系と連携する点において、臨床的にも解剖学的にも重要な意義を持つ血管です。

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