外間守善

外間守善：沖縄の言葉と文化を究めた生涯

外間守善（1924-2012）は、日本の言語学者にして沖縄学研究の第一人者として知られています。沖縄戦の悲惨な体験を生き抜き、東京大学での研鑽を経て、沖縄の文化と言語の解明に生涯を捧げました。その業績は、沖縄学研究に計り知れない貢献を果たしたのみならず、後世へと繋がる宝として高く評価されています。

激動の時代を生き抜き、学問の道を歩む

1924年、沖縄県那覇市に生まれた外間は、19歳の時、沖縄師範学校在学中に沖縄戦に巻き込まれます。第24師団に配属され、激戦地で生き延びた経験は、彼の人生観に深い影を落とすと同時に、沖縄の未来への強い思いを育むこととなりました。戦後、國學院大學文学部国文学科を卒業し、東京大学文学部言語研究室で研鑽を積みます。金田一京助、柳田國男といった巨匠の薫陶を受け、服部四郎に師事した経験は、彼の学問への姿勢を大きく形成しました。

沖縄学の確立と発展への貢献

1968年、法政大学文学部教授に就任。1972年の沖縄返還を機に発足した沖縄文化研究所では、副所長、所長を歴任し、沖縄の文化研究の中核を担いました。多大な業績を残した彼の研究は、琉球文学、特に『おもろさうし』を中心とした古代南島歌謡の解明に焦点を当てています。奄美群島、沖縄諸島、宮古・八重山諸島といった南西諸島全体の比較研究を行い、各地域の独自性と共通性を明らかにしたことは、画期的な成果と言えるでしょう。

さらに、伊波普猷の遺志を継承し、『おもろさうし』の校本、辞典、索引、校注といった膨大な作業を完成させました。これは、沖縄学研究における基礎的資料として、現在も広く活用されています。フィールドワークに基づく『南島歌謡大成』の編纂など、沖縄の口承文芸の収集と研究にも尽力し、沖縄文化の多様性と奥深さを明らかにする上で大きな役割を果たしました。

教育者、そして沖縄学の普及に尽力

法政大学教授を定年退任後も、私財を投じて沖縄学研究所を設立し、「沖縄学研究所紀要」や「沖縄学研究叢書」を発行するなど、沖縄学の普及にも尽力しました。上皇明仁、上皇后美智子両陛下にも沖縄関係で進講するなど、その活動は多岐に渡り、常に沖縄の文化と歴史を伝えることに情熱を燃やしていました。

多彩な才能と人となり

外間は、学問の世界での活躍のみならず、武道、スポーツにも造詣が深く、剛柔流空手八段の腕前を持つなど、多方面に才能を発揮しました。その幅広い経験と知識は、彼の研究に深みを与え、沖縄文化への理解を深める上で大きな力となりました。音楽プロデューサーとして活躍する息子、外間隆史氏も、彼の生き様から多大な影響を受けていると言えるでしょう。

数々の受賞と著作

外間の研究業績は高く評価され、東恩納寛惇賞、角川源義賞、福岡アジア文化賞大賞など数々の賞を受賞しました。『沖縄の言語史』『おもろ語辞書』『南島文学論』など、多数の著書・編著書を出版し、それらは沖縄学研究における重要な参考文献となっています。彼の著作は、沖縄の文化、歴史、言語を深く理解するための貴重な資料であり、現代においても広く読まれ、高く評価されています。

外間守善の生涯は、激動の時代を生き抜き、学問の道を究め、沖縄の文化と歴史の解明に生涯を捧げた、稀有な存在として記憶されるでしょう。その功績は、後世の研究者たちに多大なる影響を与え続け、沖縄学の発展に大きく寄与し続けています。

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