沖縄学

沖縄学とは

沖縄学は、沖縄県（琉球）を対象とする総合的な学問分野です。1911年に伊波普猷が『古琉球』を著したことが、学問としての沖縄学の始まりとされています。そのため、伊波の研究は現代の沖縄学の源流と位置づけられています。

沖縄学の成立背景

琉球処分によって沖縄県が日本に併合された後、沖縄の人々は社会的差別を受けたとされています。その一方で、本土への同化を目指す動きもありました。このような状況下で、伊波普猷は沖縄の歴史、言語、民俗、文化などを研究し、本土の文化との比較を通じて、沖縄の学問的意義を明らかにしようとしました。彼は、沖縄の人々を「琉球民族」と呼び、民族意識を喚起しましたが、同時に、沖縄の人々が大和民族と同祖であるという「日琉同祖論」を提唱しました。伊波の研究は、沖縄の自己認識を確立し、日本における沖縄の位置づけを考察する上で、重要な思想的基盤となりました。

研究分野の多様性

伊波普猷の研究は、『おもろさうし』の研究をはじめ、歴史学、言語学、人類学、考古学、宗教学、神話学、文化人類学、民俗学、文学など、多岐にわたります。これらの分野を横断的に研究する学際的なアプローチは、今日の総合科学の先駆けとして再評価されています。

沖縄学の担い手

沖縄学の研究者は、学者や研究者だけではありません。沖縄に関わる全ての人々が、それぞれの分野から沖縄について考え、研究することができます。文化研究だけでなく、政治、経済、法、自然環境など、多様な視点から沖縄を捉え、沖縄と日本、さらには世界との関わりを考察することができます。

近年の動向

近年では、大和民族と琉球民族を異なる民族とする立場から、「琉球民族」という言葉が用いられることもあります。また、「琉球人」や「日本人」といった枠組み自体が、歴史的に構築されたものであるとする研究も現れています。これらの研究は、沖縄の自己認識をさらに複雑なものとし、新たな議論を呼んでいます。

沖縄学の主な関連人物

伊波普猷 (沖縄学の父)
東恩納寛惇 (沖縄学の先駆者、「大交易時代」の構想者)
真境名安興 (沖縄学の先駆者)
宮城文 (『八重山生活誌』の著者)
佐喜眞興英 (法学史・法思想史)
新垣美登子 (沖縄県を代表する女性作家)
金城朝永 (言語学者)
金城芳子 (ジャーナリスト・沖縄女性史)
宮良當壯 (言語学者)
山之口貘 (沖縄県を代表する詩人)
仲宗根政善 (琉球方言学の父)
比嘉春潮 (歴史学者)
仲原善忠 (沖縄研究者)
服部四郎 (言語学者)
外間守善 (法政大学名誉教授、法政大学沖縄文化研究所所長)
中本正智 (言語学者)
名嘉真三成 (言語学者)
高良倉吉 (琉球大学名誉教授、沖縄県立博物館在職)
池宮正治 (琉球文学研究者)

参考文献

外間守善『沖縄学への道』岩波書店<岩波現代文庫>、2002年
伊波普猷『古琉球』外間守善校訂、岩波文庫、2000年。

関連項目

琉球王国
琉球文学
沖縄県の歴史
沖縄県の年表
おもろさうし
琉球語
日ユ同祖論
日鮮同祖論
法政大学沖縄文化研究所

外部リンク

琉球大学 国際沖縄研究所
法政大学 沖縄文化研究所
伊波普猷文庫目録
仲宗根政善言語資料
* 琉球語音声データベース

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