多機能情報伝達システム

多機能情報伝達システム（MIDS）

多機能情報伝達システム（英: Multifunction Information Distribution System, MIDS）は、軍用目的で設計された無線データ通信システムです。このシステムはLバンドの周波数を利用し、時分割多元接続（TDMA）という先進的な技術を採用しています。これにより、高い対電子妨害耐性と秘匿性能を実現しています。

歴史と開発

MIDSは、従来の統合戦術情報伝達システム（JTIDS）に対して完全な互換性を持たせることを目指して開発されました。主な目的は、JTIDSよりもコスト、サイズ、そして電力消費を抑えることです。このプロジェクトは、商業オフ・ザ・シェルフ（COTS）技術を取り入れたオープンアーキテクチャの端末装置として設計され、成立しています。

MIDSの開発は1987年に始まり、当初はアメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、イタリア、スペイン、カナダ、ノルウェーの8カ国が共同で行っていましたが、冷戦の終結後、参加国が縮小されました。1990年からはアメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、スペインの5カ国に絞られました。開発費は約50億ドルで、アメリカが最も大きな割合を占めています。

開発は5つのフェーズに分けられており、フェーズI（1987年－1990年）はプロジェクトの定義、フェーズII（1990年－1993年）は先行生産技術の開発、フェーズIII（1994年－2000年）は本格的な生産技術の確立、フェーズIV（2000年－2009年）は製造と支援、そしてフェーズV（2010年－）は量産に至ります。

MIDS-LVTの概要

MIDSの中でも初期に開発されたのがMIDS-LVT（Low Volume Terminal）です。アメリカ軍ではAN/USQ-140という制式番号が与えられています。MIDS-LVTの開発には、アメリカのViasat社やDLS社、またヨーロッパのEuroMIDS社など、複数の企業が関与しています。

MIDS-LVTには主に3つのシリーズがあります。これらは空軍や海軍向け、地上部隊向け、そしてF-15の近代化改修用にそれぞれ設計されています。

• - USQ-140(v)1シリーズ: 空軍・海軍向けの端末で、基本的に2つのLRUから構成されます。また、機能を拡張するためにさらに2つのLRUを追加することも可能です。
• - USQ-140(v)2/11シリーズ: 地上部隊や軍用車両向けに開発された端末で、4つのLRUによって構成されています。
• - USQ-140(v)3シリーズ: F-15の近代化を目指して設計されたもので、軽量化を実現しています。

MIDS-JTRSの進化

さらに進化したMIDSとして、MIDS-JTRS（Joint Tactical Radio System）が存在します。これは、従来のMIDSと次世代無線通信システムの統合を目指して開発されており、AN/USQ-190という制式番号が付けられています。MIDS-JTRSは、従来のMIDSよりも厳格な輸出統制が行われ、広帯域ネットワーク波形（WNW）にも対応しています。

このように、MIDSは多国籍の協力によって進化してきたシステムであり、軍事通信の重要な役割を果たしています。

もう一度検索