多紀保彦

多紀 保彦（たき やすひこ）について

多紀保彦（たきやすひこ）は、1931年8月20日に東京で生まれ、日本の魚類学の分野で広く知られる学者です。彼は2020年3月24日に88歳で亡くなりました。多紀氏は東京水産大学（現・東京海洋大学）の名誉教授であり、増殖学科を1954年に卒業後、同大学院で学び、1977年に東京農業大学より農学博士の学位を取得しました。彼の学位論文は、メコン川の魚類相に関する分析的研究をテーマとし、自然界における生物生産システムの理解を深めるものでした。

彼の職業人生の中で、様々な研究機関や大学での役割を果たしました。東京農業大学育種学研究所の研究員として経験を積んだ後、1977年には東京水産大学に助教授として迎えられ、1986年には教授に昇進しました。1994年に定年退官し、その後は東京水産大学の名誉教授となりました。さらに、自然環境研究センターの理事長や長尾自然環境財団の理事長としても活動していました。

多紀氏は1964年から、マダガスカルや東南アジア、アフリカ、中南米において淡水魚類のフィールド調査を行い、水産増殖の技術指導にも力を注いできました。彼の研究は、これらの地域の水産業発展に寄与し、多くの業界関係者に影響を与えました。

多紀氏は多くの著作を残しております。代表的な著書としては、1956年に発行された『熱帯魚の飼い方』、1979年の『未知の国未知の魚 : 淡水魚のルーツを求めて』、1993年の『魚が語る地球の歴史』などがあります。また、1995年には『古代魚総覧』、2012年には『世界で出逢った魚と人と旨いもの : わが魚類研究の軌跡』が出版され、多岐にわたる魚類に関する知識を広めました。

さらに、共編著や監修を手がけた書籍も多数存在します。例として、1991年に奥谷喬司との共編著『♂♀のはなし さかな』、1993年の編著『世界の中の日本漁業 : 東京水産大学第17回公開講座』、2008年に自然環境研究センターとの共著『日本の外来生物 決定版』などがあります。また、ハンス・ハスの『果てない深みへ : 海底冒険30年の旅』を日本語に翻訳するなど、国際的な視点からも貢献を行っています。

2020年には、もはや惜しまれる存在となった多紀氏に関する追悼文とインタビュー記事が『魚類学雑誌』第67巻第2号に掲載され、その業績が改めて評価されました。彼の死は、日本の魚類学界における一大損失であり、彼の研究は今後も多くの研究者や愛好者に影響を与え続けることでしょう。

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