多芸輪中

多芸輪中（たぎわじゅう）

多芸輪中は岐阜県西濃に位置し、揖斐川の右岸にあたる地域に存在しました。この地域は現在の岐阜県養老郡養老町の南東部にあたります。地理的には東に揖斐川、北に牧田川と金草川、南に津屋川に囲まれており、各川沿いには堤防が存在しますが、一部には明確な堤防がありません。この場所は養老山脈の扇状地で、高位部の排水が良く、水の流入を防ぐ構造になっています。そのため、完全な懸廻堤は必要とされませんでした。

この輪中は、下笠、岩道、飯ノ木、有尾、大場新田、根古地、釜之段、高柳といった内郭を含む複合輪中で、多様な構造を持っています。特に、自然堤防の背後に形成された小輪中に湛水する地域があり、その統合によって大規模な輪中が形成されています。多芸輪中は、全西濃輪中の縮図とも言える多面的な輪中です。

歴史

多芸輪中は一般的に想像されるような一円の懸廻堤を持たないため、その成立時期は不明です。しかし、内郭輪中が段階的に形成され、次第に統合していったと考えられています。最南端にある小坪（釜之段輪中）が1653年に完成し、その後すぐに隣接する高柳新田や駒野新田の開発が1670年に行われました。こうしたことから、1660年代後半には最終的な多芸輪中が形成されたという見方が強いです。また、1744年に『大榑川洗堰文書』で初めてその名が記され、1754年の宝暦治水当時の文書には懸廻堤を持つ多芸輪中の詳細が記載されています。

下笠輪中

下笠輪中は多芸輪中の北東部に位置し、自然堤防によって形成された高位部が特徴です。1649年の検地では、その堤防について記録が残されています。

岩道輪中

岩道輪中は下笠輪中の西側にあり、高位部とされていますが、独自の堤防を持たず周囲の輪中からの悪水に悩まされていました。

飯ノ木輪中

飯ノ木輪中は岩道輪中の南側に位置し、1656年に新田が開発されて懸廻堤が築かれました。

有尾輪中

有尾輪中は飯ノ木輪中の南側にあり、悪水浸入を防ぐための堤防が築かれました。その形成期は不明ですが、1644年に開墾計画が行われています。

その他の輪中

他にも、大場新田輪中や根古地輪中、釜段輪中、高柳輪中といった輪中が存在し、いずれも地理的条件に応じて様々な歴史を持っています。

水害との戦い

この地域は江戸時代以降、数多くの水害に見舞われてきました。特に1959年には大規模な水害が2度発生し、農作物にも影響を及ぼしました。これらの水害を受けて、地域の治水対策が見直され、土地改良や排水路の整備が行われてきました。

多芸輪中は、その自然環境と人々の歴史的な闘争によって育まれた独自の文化と地理を持っています。その全貌を理解することは、岐阜県の水管理や歴史を知る上でも重要です。

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