夜の蝶

映画『夜の蝶』の詳細解説

作品概要

『夜の蝶』は、1957年（昭和32年）に公開された日本の映画で、銀座の高級クラブを舞台に、そこで働く女性たちの生き様を描いた作品です。監督は吉村公三郎、主演は京マチ子と山本富士子が務めました。原作は川口松太郎の同名小説で、当時の銀座を舞台にした人間模様と、そこで生きる女性たちの愛憎劇を鮮やかに描き出しています。

ストーリー

物語は、銀座で高級クラブ「フランソワ」を経営するマダム・マリと、京都から銀座に進出してきた元舞妓のおきくという二人の女性の対立を中心に展開します。

マリは銀座の社交界で名の知れた敏腕経営者であり、政治家や実業家との幅広い人脈を持っています。一方、おきくは京都でバーを経営していましたが、銀座での成功を夢見て乗り込んできます。おきくは、マリの妹分の店にも挨拶に訪れ、マリの店からホステスを引き抜こうとします。この事がきっかけで、二人の間の対立は激化していきます。

実はマリとおきくの間には過去の因縁がありました。マリの夫がかつて京都で囲っていた女性がおきくだったのです。おきくは夫の死後、京都でバーを開き、医学生の原田の学費を援助し、将来の結婚を夢見ていました。

そんな中、関西のデパート社長、白沢が東京進出を企て、マリと親密な関係になりますが、実は白沢はおきくのパトロンで、彼女の銀座進出を支援していました。しかし、おきくの本命はあくまで原田であり、原田は同僚の女性と結婚します。

白沢の東京進出は、部下の裏切りによって失敗に終わります。その事実を知ったマリは白沢に積極的に近づき、二人は別荘へ向かう途中、おきくの運転する車と衝突し、二人は命を落とします。

キャスト

マリ：京マチ子
おきく：山本富士子
けい：穂高のり子
秀二：船越英二
白沢一郎：山村聡
原田修：芥川比呂志

その他、多くの豪華キャストが出演しています。

スタッフ

監督：吉村公三郎
製作：永田雅一
原作：川口松太郎
脚本：田中澄江
撮影：宮川一夫
音楽：池野成

背景とモデル

原作の川口松太郎の小説は、当時の銀座で人気を二分していたクラブのママ、川辺るみ子と上羽秀がモデルとなっています。小説では、川辺がマチ、上羽がお菊の名で描かれ、二人の確執が物語の中心となっています。映画のヒットとともに、「夜の蝶」「ホステス」などの言葉が流行語となり、社会現象となりました。

テレビドラマ

1962年には、本作を原作としたテレビドラマが日本テレビ系列で放送されました。主演は淡島千景が務めています。

舞台

1957年10月に新派で舞台化され、その後も数回再演されています。2019年にも三越劇場で上演されました。

作品の評価

『夜の蝶』は、当時の社会情勢や女性の生き方を反映した作品として、高い評価を受けています。銀座の夜の世界を舞台に、複雑な人間関係と欲望を描いたドラマは、観客を魅了しました。また、京マチ子と山本富士子の演技は、映画史に残る名演として語り継がれています。

その他

映画の公開後、映画の舞台となった銀座のクラブやホステスという存在が注目を集め、社会現象になりました。また、映画のタイトルにもなった「夜の蝶」という言葉は、水商売で働く女性たちの代名詞として使われるようになりました。


『夜の蝶』は、映画史に残る名作であり、現代の観客にも十分に見応えのある作品です。

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