田中澄江

田中澄江の生涯と業績

田中澄江（たなか すみえ）は、1908年に東京府で生まれ、2000年に91歳で生涯を閉じました。彼女は、脚本家、著作家として、日本の文化と芸術に多大な貢献をした人物です。旧姓は辻村で、夫は劇作家の田中千禾夫です。小学校時代には、後に満州で活躍した川島芳子と同級生でした。

学生時代と結婚

1932年に東京女子高等師範学校（現在のお茶の水女子大学）国文科を卒業。学生時代から、岡本綺堂が主宰する「舞台」で演劇の習作に励み、聖心女子学院で教師として教鞭をとりました。1934年には、同じく劇作家であった田中千禾夫と結婚し、神奈川県藤沢町鵠沼に新居を構え、菊池寛の戯曲研究会にも参加しました。1939年には、戯曲『はる・あき』で注目を集めました。

戦中・戦後の活動

戦時中は鳥取へ疎開し、戦後、長男の病気治療のために京都へ転居しました。生活が困窮する中、家計を支えるために地方新聞の芸能記者として働きながら、自身の体験に基づいた戯曲「悪女と眼と壁」「京都の虹」などを発表しました。1951年には、息子たちと共にカトリックの洗礼を受けました。

映画・テレビドラマでの活躍

1952年、映画『我が家は樂し』『少年期』『めし』の脚本が高く評価され、ブルーリボン賞脚本賞を受賞しました。その後も、数々の映画やテレビドラマの脚本を手がけ、1960年代からはテレビドラマの脚本にも力を入れました。特に、NHK朝のテレビ小説「うず潮」や「虹」などの脚本は、多くの視聴者に感動を与えました。

受賞と栄誉

田中澄江は、その功績が認められ、数々の賞を受賞しています。1973年には『カキツバタ群落』で芸術選奨文部大臣賞、1981年には随筆集『花の百名山』で読売文学賞、1996年には『夫の始末』で女流文学賞を受賞しました。1999年には、東京都名誉都民の称号を授与されました。

山を愛した作家

彼女は、山を愛する作家としても知られています。1967年から女性だけの山歩き同好会「高水会」を組織し、自ら主宰しました。また、随筆集『花の百名山』は、多くの登山愛好家に親しまれています。1988年には、長男の妻である三田恭子と共に、無名女性画家のための「嫁菜の花美術館」を自宅に建設しました。

その他の活動と晩年

中野区の教育委員や国語審議会の委員も歴任し、無礼な若者や男性に対してはっきりと意見を述べる一方、女性の向学心や労働意欲を大切にしました。晩年は、随筆「老いは迎え討て」などを著し、老年哲学を説きました。2000年3月1日、老衰のため東京都清瀬市の病院で亡くなり、府中カトリック墓地に埋葬されました。

主な作品

映画

『我が家は樂し』（1951年）
『少年期』（1951年）
『めし』（1951年）
『晩菊』（1954年）
『流れる』（1956年）
『杏っ子』（1958年）
『放浪記』（1962年）
『うず潮』（1964年）

テレビドラマ

『うず潮』（1964年）
『虹』（1970年）
『しろばんば』（1973年）
『二十四の瞳』（1974年、1976年）
その他多数

戯曲

『愛する』（1952年）
『田中澄江放送劇集 現代女性像・八篇』（1954年）
『田中澄江戯曲全集』全2巻（1959年）

小説

『十七歳の日記』（1955年）
『花嫁の学校』（1956年）
『カキツバタ群落』（1973年）
『夫の始末』（1995年）

随筆

『悪女の嘆き 女の幸福を求めて』（1955年）
『花の百名山』（1980年）
『老いは迎え討て この世を面白く生きる条件』（1996年）

受賞歴

1951年：第2回ブルーリボン賞脚本賞
1952年：NHK放送文化賞
1973年：芸術選奨文部大臣賞
1981年：読売文学賞
1996年：女流文学賞、紫式部文学賞
* 1999年：東京都名誉都民

田中澄江は、その多彩な才能と、常に社会や人間と向き合う姿勢によって、多くの人々に影響を与え続けました。彼女の作品は、今もなお、多くの人々に感動と示唆を与えています。

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