夜叉ヶ池 (映画)

映画『夜叉ヶ池』について

1979年に松竹によって製作・配給された映画『夜叉ヶ池』は、泉鏡花の同名戯曲を原作としたファンタジー作品です。監督は篠田正浩が務め、主演には女形の坂東玉三郎が抜擢され、ヒロインと夜叉ヶ池の主である白雪姫という難易度の高い二役を演じきりました。

概要

この映画は、公開後テレビで一度放送されたのみで、その後は権利関係の調整が難航し、長らくDVD化などの二次利用ができない状態でした。しかし、2020年に篠田監督と坂東玉三郎が再会し、この作品を現代の人々にも見てもらいたいという思いが一致したことから、両者の全面協力のもと、映像と音響の修復作業が丁寧に行われました。

その結果、4Kデジタルリマスター版が完成し、2021年3月に衛星劇場で2K放送されたのを皮切りに、劇場での特別上映やブルーレイの発売が決定しました。これは、長年の時を経て、名作が再び日の目を見るという映画史に残る出来事と言えるでしょう。

特撮と撮影

松竹は、この映画の特撮に2億円という巨額の予算を投じ、東映の特撮研究所のスタッフを招きました。特撮監督には、矢島信男が就任し、大規模なセットが組まれ、迫力のある映像が生み出されました。

クライマックスの洪水シーンでは、巨大な水タンクが使用され、かつての映画『忘れえぬ慕情』での長崎台風襲撃シーンを彷彿とさせるような、ダイナミックな映像が展開されています。また、海外ロケもハワイやブラジルのイグアスの滝などで行われ、作品に壮大なスケールを与えています。

スタッフとキャスト

監督：篠田正浩
製作：杉崎重美、富沢幸男、中川完治
脚本：田村孟、三村晴彦
撮影：小杉正雄、坂本典隆
音楽：冨田勲
美術：粟津潔、朝倉摂、横山豊
特撮監督：矢島信男


キャスト

百合・白雪姫：坂東玉三郎（二役）
萩原晃：加藤剛
山沢学円：山﨑努
湯尾峠の万年姥：丹阿弥谷津子
鯉七：井川比佐志
蟹五郎：常田富士男
木の芽峠の山椿：石井めぐみ
十三塚の骨：阿藤海
影法師・鐘つき弥太兵衛：浜村純（二役）
鯖江太郎：古田正志
虎杖の入道：佐藤和男
鯰入：三木のり平
与十：山谷初男
与十の女房：高山真樹
与十の娘：西願由美
鹿見宅膳：南原宏治
権藤管八：安部徹
斎田初雄：矢崎滋
村の女：小林トシ江
老婆：田中筆子
畑上嘉伝次：金井大
伝吉：唐十郎
小烏風呂助：大前均
穴隈鉱蔵：金田龍之介
* その他、下馬二五七、十貫寺梅軒、不破万作、坂東守若、小田草之助、岡本忠幸、葛城佑、沖秀一、篠原靖夫

音楽

音楽は冨田勲が担当し、クロード・ドビュッシーやモデスト・ムソルグスキーの楽曲をシンセサイザーで演奏しています。特にドビュッシーの「沈める寺」や「雪の上の足跡」は、幻想的な世界観をより一層引き立てています。

封印からの復活

長らくソフト化がされず、幻の作品となっていた『夜叉ヶ池』ですが、4Kデジタルリマスター版の完成により、再び多くの人々の目に触れる機会が与えられました。この復活は、過去の名作を次世代に伝える上で、非常に重要な出来事と言えるでしょう。

もう一度検索