夜想曲第20番 (ショパン)

夜想曲第20番 嬰ハ短調 KK. IVa-16「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」

フレデリック・ショパンが1830年の春に創作した「夜想曲第20番 嬰ハ短調 KK. IVa-16」は、彼の遺作として知られるピアノ独奏曲です。この作品は、1875年1月5日に出版されましたが、正式な献呈がないものの、ショパンの姉であるルドヴィカ・ショパンがピアノ協奏曲第2番を練習する際のために書かれたとされています。

初版では「アダージョ」というタイトルが付けられていましたが、著名な作曲家ブラームスがこの作品を写譜した際にそのタイトルを削除しました。それにより、残った速度記号「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ（Lento con gran espressione）」が名の由来となり、現在ではこのタイトルで知られています。また、ルドヴィカがショパンの未出版の作品をカタログ化する際に、「夜想曲風のレント（Lento w rodzaju Nokturna）」と表現したことから、この曲は夜想曲として親しまれるようになりました。気をつけなければならないのは、各版や出版社によって音の高さや強弱、拍子に様々な違いがある点です。

曲の構成

この作品は嬰ハ短調、レント・コン・グラン・エスプレッシオーネの4分の4拍子、三部形式で構成されています。曲は4小節の序奏から始まり、左手が分散和音による伴奏を担当し、右手は旋律を奏でる主題が現れます。

中間部に入ると、21小節目からピアノ協奏曲第2番の第1楽章と第3楽章で用いられている旋律が導入されます。初稿では、左手が4分の4拍子の伴奏の中に、右手がピアノ協奏曲の4分の3拍子の旋律を書き込まれていましたが、ショパン自身が後にこれを4分の4拍子のリズムに変更しました。

30–32小節では、歌曲『乙女の願い』（Źyczenie, 作品74-1）のモチーフが組み込まれ、その後の経過部ではピアノ協奏曲の別の旋律を用いた楽句に移行します。再現部では、主題が変形して表れ、さらに上行と下行の装飾音が4回繰り返され、極めて繊細に曲が閉じられます。

著名なカバー曲

この作品は数々の著名なカバーが存在します。たとえば、ナタン・ミルシテインによるヴァイオリン編曲や、平原綾香による「ノクターン」や「カンパニュラの恋」などがあります。

使用作品

「夜想曲第20番」は、映画『戦場のピアニスト』（原題: The Pianist）や『ピースメーカー』（The Peacemaker）など、様々な作品でも使用されています。

脚注

詳しい楽譜については、国際楽譜ライブラリープロジェクトで「夜想曲第20番 嬰ハ短調 KK. IVa-16「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」の楽譜」をご確認ください。

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