夜桜銀次事件

夜桜銀次事件（博多事件）とは

夜桜銀次事件（よざくらぎんじじけん）または博多事件は、1962年1月16日に福岡県福岡市で発生した暴力団抗争事件です。三代目山口組石井組組員の平尾国人（通称：夜桜銀次）が、久留米市の鳥巣組組員である小川靖敏と平元新治によって射殺されたことが発端となり、山口組が報復のために福岡へ大規模な組員を派遣、福岡県警による大規模な検挙へと発展しました。

事件の経緯

夜桜銀次の登場と射殺

1961年10月、平尾国人が博多に現れます。平尾は明友会事件に関与し、大阪府警から傷害および銃刀法違反の容疑で指名手配されていました。彼は山口組伊豆組の伊豆健児組長の庇護を受け、福岡市下祇園町の「博多アパート」で生活を始めます。その後、平尾は以前関わりのあった炭鉱経営者・松岡福利から多額の金銭を受け取るようになりますが、次第にその関係は脅迫的なものへと変化していきました。

1961年10月20日、平尾は博多の住吉一家幹部・鷹木末雄が開いていた賭場に現れ、宮本組組長の宮本勝を殴打し、銃を発砲して威嚇。この事件を受け、鷹木は宮本に対し、平尾が山口組の鉄砲玉である可能性を考慮し、報復を控えるよう指示します。伊豆も平尾に福岡から逃げるように忠告しますが、平尾はこれを聞き入れませんでした。

1962年1月1日、平尾は松岡の元を訪れてさらに金銭を要求。松岡は鳥巣組に平尾の殺害を依頼します。鳥巣組は組員の小川と平元に殺害を実行させ、1月16日、小川と平元は平尾の住むアパートを襲撃し、射殺しました。事件後、伊豆は山口組組長である田岡一雄に報告し、事態は急展開を迎えます。

伊豆組と宮本組・大島一家の対立

平尾の死後、伊豆組と、宮本組と兄弟分の関係にある大島一家との間で小競り合いが発生。伊豆は、宮本組と大島一家が手を組んで伊豆組を狙っていると考え、山口組に報告します。これを受けて山口組は宮本組への報復を決意し、組員を福岡へ派遣する準備を始めます。

山口組の福岡進出と福岡県警の一斉検挙

事態を重く見た中間市の大野組組長・大野留吉が仲裁に入りますが、手打ち交渉は決裂。山口組は報復のため、石井組と伊豆組を支援する名目で、総勢250人もの組員を福岡へ送り込みます。これに対し、福岡県警は厳戒態勢を敷き、博多駅前で大規模な検問を実施。山口組組員の入念な取り調べを行い、武器の所持などを理由に次々と逮捕します。

福岡県警は凶器準備集合罪を適用し、山口組組員の逮捕を決定。中洲一帯を停電させ、その隙に組員の宿泊する旅館や伊豆組事務所へ踏み込み、多数の組員を逮捕しました。この際、後の四代目山口組組長となる竹中正久も逮捕されています。最終的に、福岡県警は100人以上の山口組関係者を検挙し、多数の武器を押収しました。

事件後

山口組と宮本組・大島組・住吉一家・大野組との手打ち式は、事件から約2ヶ月後の3月15日に北九州市で行われました。また、平尾殺害に関与した小川、平元、鳥巣兄弟、松岡も逮捕され、事件は終結に向かいました。

夜桜銀次事件は、暴力団抗争の激化と、警察の取締りの強化という、当時の社会情勢を反映した事件として、その名を歴史に残しています。

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