夜間飛行 (ちあきなおみの曲)

夜間飛行

「夜間飛行」（やかんひこう）は、日本の歌手・ちあきなおみが1973年6月25日に発表したシングルである。作詞は吉田旺、作曲は中村泰士、編曲は高田弘がそれぞれ担当した。

楽曲解説

本作は、ちあきと作詞家・吉田旺、作曲家・中村泰士という強力なコンビによる楽曲群の一つとして生まれた。1972年5月の「禁じられた恋の島」を皮切りに、同年9月に発表され「第14回日本レコード大賞」を受賞した大ヒット曲「喝采」、そして1973年2月発売の「劇場」に続く、この制作陣による4作目のシングルにあたる。特に「喝采」「劇場」「夜間飛行」の三曲は、そのドラマティックな詞世界と情感豊かなメロディーから、当時の音楽界で「ドラマチック歌謡」と称され、一連のシリーズとして大きな注目を集めた。

「夜間飛行」は、そのタイトルが示す通り、夜の空を旅する情景や、それにまつわる切ない心情を描いた作品である。楽曲の大きな特徴として、曲の途中に挿入されるフランス語による機内アナウンスが挙げられる。具体的な地名としてパリのオルリー空港の名が登場し、リスナーを楽曲の世界観へと深く引き込む効果を生んでいる。

商業的な成功においても、「夜間飛行」はちあきの代表曲の一つとなった。オリコンチャートでは最高位15位まで上昇するヒットを記録。その人気を受けて、発表と同年の1973年末に放送された『第24回NHK紅白歌合戦』において、ちあきなおみによって本楽曲が歌唱されたことは、当時の楽曲の評価の高さを物語っている。

この「ドラマチック歌謡」三部作の締めくくりとも位置づけられる本作について、作曲を手がけた中村泰士は後年、特別な思いを語っている。中村は、「夜間飛行」が「多くの歌手に歌い継がれても遜色ない」普遍的な力を持つ楽曲であると同時に、ちあきなおみという「稀有な歌手」と共にこの曲を創り上げた経験が、作曲家としての喜びと同時に、彼女のような表現者との仕事がもたらす深いジレンマを克服する契機となったことを示唆している。

収録曲

シングルには、表題曲である「夜間飛行」（正式タイトル：LE VOL DE NUIT ）のほか、カップリング曲として「二年前の秋」（正式タイトル：IN AUTUMN TWO YEARS AGO ）が収録されている。両曲とも作詞は吉田旺、作曲は中村泰士、編曲は高田弘という制作陣によるものである。

カバー

発表から長い年月を経た現在でも、「夜間飛行」は多くの音楽ファンに愛され続けている。近年では、歌手のおかゆが2022年4月27日に発売したシングル『赤いひまわり』の「夜間飛行盤」に、本楽曲のカバーが収録されており、世代を超えて歌い継がれる名曲としての地位を確立している。

まとめ

ちあきなおみの類稀な歌唱力と、吉田旺・中村泰士によるドラマティックな詞曲が見事に融合した「夜間飛行」は、「ドラマチック歌謡」という一時代を象徴する作品であり、日本の歌謡史において特別な輝きを放つ一曲と言えるだろう。

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