夢はマジョリカ・セニョリータ

「夢はマジョリカ・セニョリータ」は、中谷美紀と東恵子によるアイドルユニット、KEY WEST CLUBが1992年 8月21日に発表したシングル盤収録曲です。この作品は、KEY WEST CLUBとして通算3枚目のシングルにあたり、同時にグループが活動を停止する前の最後のリリースとなりました。

楽曲の背景と「ムーンライト伝説」

この楽曲は、元々KEY WEST CLUBがライブパフォーマンスなどで披露するために制作されたものです。そのオリジナルのメロディラインの一部が、後発でありながら国民的な知名度を獲得することになるアニメ『美少女戦士セーラームーン』の記念すべき初代オープニング主題歌、「ムーンライト伝説」（歌唱：DALI、1992年3月21日発売）に転用されたという、日本のポピュラー音楽界においても類を見ない経緯を持っています。「ムーンライト伝説」と同一、あるいは非常に酷似したメロディラインを持つKEY WEST CLUBによる原曲バージョンは、リリースに先行して、日本テレビで深夜に放送されていた番組『IDOL2』で歌唱された記録があり、また有線放送を通じて耳にした人もいたようです。

シングル化に際しての変更点とクレジット問題

その後、本作がシングルとして正式にリリースされる運びとなった際、楽曲はオリジナルの歌詞を維持したまま、メロディが新たに作曲し直されたバージョンが採用されました。このシングルに収録された再作曲版では、原曲の歌詞の最後に位置する2句が歌唱パートから省略されています。しかし、リリース当時のシングルのジャケットには、歌唱から外された部分も含めた、楽曲の完全な歌詞が印刷されていました。

本作を巡っては、制作クレジットに関する混乱も発生しました。シングルの発売当初の表記では、作曲者が「小諸鉄矢」、編曲者が「寺尾広」とされていました。ところが、実際に製品には「お詫びクレジット内に変更がありました」という趣旨の訂正を知らせる紙が封入されており、これにより正式な作曲者が「川島だりあ」、編曲者が「池田大介」であることが訂正・告知されました。この訂正後の情報は、JASRAC（日本音楽著作権協会）の楽曲登録情報とも一致しています。ちなみに、「小諸鉄矢」という名前は、音楽家として多方面で活動する近田春夫の別名義の一つとしても知られていますが、本作のクレジットに記載された小諸鉄矢は、近田春夫本人や、彼が関与したとされるCM NETWORKとは関連がないとされています。このクレジット訂正の経緯は、楽曲の著作権帰属や制作背景に関して、後年まで様々な憶測や議論を生む要因となりました。

入手困難な時期と初のアルバム収録

「夢はマジョリカ・セニョリータ」は、本作のリリースをもってKEY WEST CLUBが解散という形になったため、残念ながらグループのオリジナルアルバムに収録されることはありませんでした。シングル盤自体も比較的早い時期に廃盤となったため、長期間にわたり、この楽曲を正規の形で入手することは非常に困難な状況が続いていました。しかし、2012年9月19日にソニー・ミュージックダイレクトから発売された、1980年代後半から1990年代前半にかけて活躍したアイドルたちの楽曲を集めたコンピレーションアルバム『IDOL! アイドル! あいどる! 80's-90's』に本作が収録されたことで、結果的にこの楽曲が初めてアルバムに収録される機会となりました。このオムニバス盤への収録は、長らくこの曲を聴くことができなかったファンにとって朗報となり、新たなリスナーにも楽曲が届けられるきっかけとなりました。

タイトルと歌唱の表現差異

楽曲の公式なタイトル表記は「夢はマジョリカ・セニョリータ」ですが、実際に楽曲内で歌われるサビなどのフレーズでは、「夢の（ゆめの）マジョリカ・セニョリータ」と、「は」ではなく「の」という助詞が使われている点が特徴の一つです。

シングル盤の収録曲

シングル盤『夢はマジョリカ・セニョリータ』には、以下の3トラックが収められています。

1. 夢はマジョリカ・セニョリータ
作詞・作曲：川島だりあ
編曲：池田大介
シングル用に再作曲されたメロディのバージョンです。
2. LOVE・Secret Version
作詞：小田佳奈子
作曲：多々納好夫
編曲：葉山たけし
KEY WEST CLUBが1991年にリリースしたファーストアルバム『UNBELIEVABLE』からのリカット楽曲です。
3. 夢はマジョリカ・セニョリータ (TV Style Songless Version)
表題曲のインストゥルメンタルバージョンです。

「夢はマジョリカ・セニョリータ」は、KEY WEST CLUBの最終作であることのみならず、後のヒットアニメ主題歌との意外な関連性、クレジット表記を巡る混乱、そして長年の入手困難を経て再び広く聴かれるようになった経緯など、多角的な視点から語られるべきユニークな背景を持った楽曲と言えるでしょう。

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