大いなる勇者

大いなる勇者：ロッキー山脈に生きる男の物語

1972年公開のアメリカ映画『大いなる勇者』（原題: Jeremiah Johnson）は、ロバート・レッドフォード主演による西部劇です。監督はシドニー・ポラック。19世紀中期のアメリカを舞台に、文明社会を捨て、ロッキー山脈で山男として生きようとするジェレマイア・ジョンソン（レバー・イーティング・ジョンソン）の波乱に満ちた生涯を描いています。

映画の脚本は、レイモンド・W・ソープとロバート・バンカーによる『Crow Killer: The Saga of Liver-Eating Johnson』やヴァーディス・フィッシャーの『Mountain Man: A Novel of Male and Female in the Early American West』を基に、ジョン・ミリアスが執筆。カール・サンドバーグの著作や、チャールズ・ポーティスの小説『トゥルー・グリット』からの影響も伺えます。

物語は、1850年代のアメリカ、急速に発展する文明社会に背を向けたジェレマイア・ジョンソンがロッキー山脈へと旅立つところから始まります。彼はそこで厳しい自然環境の中で、狩猟やサバイバル技術を身につけ、山男として生きていく決意を固めます。

ジョンソンは、過酷な冬の中で凍死した山男から50口径ホーケン銃を受け継ぎ、その後ベテランの山男ベア・クロウと出会い、彼から生き抜くための知識を学びます。彼は、ネイティブアメリカンの諸部族と交易を行い、中でもクロウ族の赤シャツとは親しい関係を築きます。しかし、開拓者とネイティブアメリカン間の暴力的な衝突を目の当たりにし、その中で少年ケイレブと出会います。

ある日、開拓者一家惨殺事件の犯人を追跡する中で、ジョンソンは開拓者とネイティブアメリカンの間で起こる凄惨な暴力と、その背後にある複雑な対立関係を垣間見ます。復讐を遂げるため犯人を殺害したことで、ジョンソンはフラットヘッド族と出会い、その族長の娘スワンと結婚し、ケイレブと共に平和な生活を送ります。

しかし、この静穏な日々は長くは続きませんでした。ある日、ジョンソンは、困窮した白人開拓者を助けるため、マルベイ中尉率いる騎兵隊に同行することになります。その旅路で、ジョンソンはクロウ族の聖地を無意識のうちに冒してしまい、その結果、スワンとケイレブはクロウ族によって殺されてしまいます。

愛する者たちを失ったジョンソンは、深い悲しみと怒りに突き動かされ、クロウ族への復讐を開始します。彼の残虐な行為は次第にエスカレートし、彼は「クロウ族殺し」として恐れられるようになります。しかし、彼の復讐劇は、彼自身の死と、クロウ族との間の複雑な関係の終焉をもたらします。そして最後に、ジョンソンは険しい山々に囲まれた地で、自らの新たな旅路を歩み始めるのです。

映画は、壮大なロッキー山脈の自然を背景に、人間の生存と対立、文明と野生の対比、そして復讐と贖罪といったテーマを深く掘り下げています。ロバート・レッドフォードの優れた演技、そしてシドニー・ポラック監督による見事な演出が相まって、観る者を圧倒する作品に仕上がっています。美しい自然描写と、人間の業を描写するシリアスな展開は、忘れがたい感動を与えてくれるでしょう。

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