大いなる驀進

大いなる驀進

『大いなる驀進』（おおいなるばくしん）は、1960年11月8日に公開された日本映画で、カラーとシネマスコープ形式で撮影されています。製作は東映で、監督は関川秀雄、脚本は新藤兼人が担当しました。主演には中村賀津雄、三國連太郎、佐久間良子らが名を連ねています。この作品は、日本の鉄道開通88周年を記念し、日本国有鉄道（国鉄）の全面的協力のもとで制作されました。

概要

物語は、東京から長崎行きの夜行特急「さくら」に乗り込む鉄道員の矢島を中心に展開します。国鉄が運行する「さくら」の旅路における出来事を描きながら、当時の鉄道風景や車両の様子がリアルに再現されているのが特徴です。ホスピタリティにあふれる鉄道員たちの姿や、事件が連鎖する緊迫した展開が観客を引き込みます。また、当時の博多駅の風景も映され、歴史的な資料映像としての価値も高い作品です。

監督の関川秀雄の実兄は、後に国鉄での重要なポストについた人物であるため、その影響も感じさせる作品となっています。

ストーリー

物語の主人公、東京車掌区に所属する列車給仕の矢島は、鉄道員としてのやりがいを見出せず、東京発長崎行きの「さくら5号」の乗務を最後に退職する決意をします。しかし、彼の婚約者である君枝は、なんとか彼の心を変えようと「さくら」に乗り込むことを決意します。矢島は自由席にいる彼女を見つけ、降りるよう告げますが、君枝は最後まで彼を支えると主張します。

同時に、矢島の同僚である食堂ガールの芳子は彼に好意を寄せていたものの、婚約者の存在を知りショックを受けるという人間ドラマも描かれます。それに加え、鉄道犯であるカメレオンの松が登場し、一連の悪行を警戒する必要が生じます。

列車内では、さまざまな騒動が引き起こされます。一等寝台の乗客が盗難の被害を訴え、他の乗客の一人が自殺を図ります。これらの出来事は、乗務員としての責任を果たすために奮闘する矢島に新たな試練を与える要素となります。

さくら号は夜の運行中、台風に襲われ、前方に落石による緊急停車を余儀なくされるという危機に直面します。運行の責任を果たすために、矢島は初めての緊急事態へと立ち向かいます。先輩車掌の指導に従い、乗客の安全を優先しながら状況を改善しようと奮闘する過程で成長を遂げます。

最終的に、列車は無事に長崎駅へ到着し、矢島は退職を取りやめる決意を固めます。彼の旅の中での成長や、周囲との絆が描かれており、感動的なクライマックスを迎えます。

キャスト

本作には中村賀津雄、佐久間良子、三國連太郎など、多彩なキャストが名を連ねており、各演者が役に深みを与えています。特に矢島役の中村賀津雄は、彼の成長を繊細に演じ切り、観客に強い印象を残します。

製作と影響

映画は東映の代表作として国鉄とのタイアップが行われ、観客動員に成功しました。この作品以降、東映は国鉄と結びついた映画を多数制作し、時代の変遷を反映した作品群へと繋がっていきます。公開から数年にわたり人気を博し、特に国鉄労働組合の観客動員を得ることで、団体動員映画の先駆けとなったことも評価されています。

ビデオグラム化

本作は長年ビデオグラム化されていなかったが、2012年にはDVDとしてリリースされました。現在でもYouTubeチャンネルでの配信など、視聴の機会が拡大しています。

以上のように、『大いなる驀進』は鉄道の魅力と人間ドラマを巧みに織り交ぜた作品であり、その内容は今も多くの人々に視聴され、愛され続けています。

もう一度検索