大きな政府

大きな政府の概念

大きな政府（おおきなせいふ）とは、政府が積極的に市場に介入し、経済を安定させ、所得格差を是正することを目指す政策や思想を指します。この考え方は、特にスウェーデンやデンマークなどの福祉国家において顕著であり、社会民主主義や国家資本主義に基づいています。

概要

このような政策が取られる背景には、政府の財政支出が増大することがあります。その結果、税金や社会保障費などの国民負担が高まり、計画経済志向の福祉国家へと傾くことがあります。大きな政府では、フル雇用の実現が重視されますが、その一方で個人の自由への制約や、規制・官僚機構の肥大化、さらに保護貿易といった傾向が見られることがあります。これは、自主管理社会主義を除く共産主義とは異なる特徴として捉えられています。

大きな政府の政策には、高福祉・高負担の社会的義務に基づいた歳出の策定、高い税率の維持、大規模な公的事業の国有化、企業活動への規制強化が含まれます。また、公共事業においては、インフラへの投資が強化され、失業者や地方経済の救済を図る側面もあります。

混合経済との混同が生じることがありますが、混合経済は「小さな[[政府]]の大きな政府化」だけではなく、「大きな政府の小さな[[政府]]化」も含むため、同一視することはできません。

学者の見解

経済学者の井堀利宏によると、政府の歳入・歳出の大きさが「政府の大きさ」を示すとされています。特に、所得と資産が多い人は税負担が大きい割に政府からの恩恵が少ないため、彼らは「小さな[[政府]]」の方を支持する傾向にあります。一方で、所得や資産が少ない人々は税負担が小さいものの政府からの恩恵が期待できるため、「大きな政府」を支持する傾向があります。しかし、どちらの立場にあっても、不当な税金の使い道や不公平な分配に対する不満は共通しています。

また、小塩隆士は「大きな政府」の弊害として、行政サービスの運営が非効率になることや、必要以上の負担を国民に課すことを指摘しています。さらに、松原聡は「大きな政府」がもたらす問題として、利権を得る者が増加し、そこに群がる政治家や業者が増加することを懸念しています。中野剛志は、リーマン・ショック以降、日本はさらに大きな政府に向かって進んでいると述べています。

21世紀における傾向

テロリズムの脅威が高まる現代において、各国で防衛予算の拡大が求められています。フランスでは、テロ事件を受けて防衛費を削減する予定をキャンセルし、その結果として17,000人以上の職員を新たに採用する方針を打ち出しました。イタリアも同様に、テロ対策として政府支出を増加させ、文化維持のための投資を行っています。

これらの動向は、国民にとっての安全保障や経済の安定に関連しており、大きな政府のもとで支出が増えることが一つの解決策として位置づけられています。防衛支出の増加が観光産業を一時的に救済する側面も期待されており、今後の政策形成において重要な要素となるでしょう。

このように、「大きな政府」という概念は、一方で経済や社会の安定を目指す一方で、個人の自由や効率性に対する制約をもたらすことがあるため、さまざまな視点からの検討が求められます。

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