大内青巒

大内青巒：明治・大正期の仏教学者と多様な活動

大内青巒(おおうちせいらん、1845-1918)は、明治から大正時代にかけて活躍した著名な仏教学者にして思想家です。仙台藩士の家に生まれた青巒は、宮城郡東宮浜(現在の七ヶ浜町)で生まれ、後に水戸で曹洞宗に帰依し、出家して「泥牛」と号しました。その後、江戸で仏教研究に没頭します。

明治維新後、青巒は転機を迎えます。大洲鉄然の推薦により、浄土真宗本願寺派第21世宗主・大谷光尊の侍講に任命されたのです。この経験は、青巒の思想形成に大きな影響を与えたと考えられます。

青巒は、単なる研究者にとどまりませんでした。明治7年(1874年)には雑誌『報四叢談』、翌年には新聞『明教新誌』を創刊し、仏教啓蒙運動を積極的に展開しました。当時、近代化が急速に進む日本において、仏教の現代的意義を問う、先駆的な役割を果たしたと言えるでしょう。

その活動は多岐に渡ります。明治14年(1881年)には、佐田介石、浅田宗伯らと共に国産品愛用を推進する「観光社」を設立。国産品振興という、当時の社会問題にも積極的に関与しました。

さらに、明治22年(1889年)には、島地黙雷や井上円了らと共に、天皇崇拝を基調とする仏教政治運動団体「尊皇奉仏大同団」を結成します。これは、国家主義の高まりの中で、仏教を国家体制に統合しようとする試みでした。

学問面でも大きな業績を残しています。曹洞宗の重要な教典である『修証義』の起草にも携わり、大正3年(1914年)には東洋大学の学長に就任。教育者としても重要な役割を果たしました。

青巒の多才ぶりは、彼の旺盛な著作活動からも見て取れます。代表的な著作として、『豆州熱海誌』『釈門事物紀原』『日本仏教史略』『仏教大意』など多数の書籍を著述。仏教思想のみならず、歴史、社会問題、さらには人生論にまで及ぶ幅広いテーマを扱っています。これらの著作は、当時の社会情勢を反映するとともに、青巒自身の思想的深みを示す貴重な資料です。

私生活においても、青巒は多くの才能ある子孫を残しました。息子には洋画家の青坡、彫刻家・仏師の青圃がおり、青坡の息子である孫には画家・エッセイストの青琥がいます。娘婿は彫刻家の木村五郎という、芸術一家を築いたと言えるでしょう。

大正7年(1918年)、脳溢血のため64歳でこの世を去りました。しかし、その功績は、日本の仏教史、思想史、そして教育史に大きな足跡を残しました。青巒の生涯と業績は、近代日本における仏教の変遷と、その社会への関与を理解する上で、極めて重要な役割を果たしています。

彼の著作は、現代においても多くの示唆を与えてくれるでしょう。多忙な日々を送る現代人にとって、青巒の思想は、人生の指針となり、心の安らぎを与えてくれる可能性を秘めていると言えるでしょう。

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