大分交通宇佐参宮線

宇佐参宮線

宇佐参宮線は、かつて大分県に存在した大分交通が運営する鉄道路線でした。豊後高田市の豊後高田駅から、国鉄（現JR九州）日豊本線との接続駅である宇佐駅を経由し、宇佐神宮への玄関口であった宇佐八幡駅まで、全長8.8kmを結んでいました。主に、日豊本線を利用して宇佐に到着した参拝客や地域住民が、豊後高田市街や宇佐神宮へ向かうための重要なアクセス手段として機能していました。

設立と延伸の夢

この路線の始まりは、明治末期に遡ります。宇佐神宮を擁する宇佐郡宇佐町と、国東半島の西の玄関口である西国東郡高田町（現・豊後高田市）を、当時既に開通していた国鉄宇佐駅と結ぶ鉄道を望む地元有志の声が高まりました。1911年には鉄道敷設が申請され、翌1912年には免許状が交付されました。しかし、資金調達が難航し、計画は一時停滞します。度重なる申請期間の延長を経て、1914年3月に資本金15万円をもって宇佐参宮鉄道株式会社が設立されました。同年12月にようやく工事施工認可が下り、着工に至りました。

開業は1916年3月、豊後高田 - 宇佐 - 宇佐八幡間の全線が開通しました。開業後、業績は順調に推移し、車両や施設の増強が進められました。これに自信を得た会社は、さらなる路線網拡大の構想を抱きます。豊後高田から中真玉村へ向かう路線と、宇佐八幡駅から日出生鉄道（後の大分交通豊州線）拝田駅へ至る路線の二つの延伸計画です。中真玉村への延伸は1924年に免許を取得しましたが、豊後高田町が中間駅となることに反対したり、桂川への架橋費用が重荷となったりしたため、1928年に免許が失効し実現しませんでした。

一方、拝田駅への延伸は1928年に免許を取得し、用地買収や工事が順調に進められました。しかし、終点となる拝田駅の共同使用について、豊州鉄道側が自社に不利になるとして難色を示し、協議は難航します。最終的に鉄道大臣による裁定を申請するも、決着はつきませんでした。こうした状況に加え、当時の不況が経営を圧迫し、収益が悪化したことから、1935年に拝田への延伸計画も放棄され、西国東郡と宇佐郡を結ぶ壮大な鉄道ネットワーク構想は消滅しました。

大分交通への統合と廃止

太平洋戦争中の1945年4月、戦時下の交通統制政策により、宇佐参宮鉄道は県内の他の鉄道・バス会社と共に大分交通に統合されました。これにより、宇佐参宮線は大分交通の一路線となります。

戦後も運行は続けられましたが、統合された大分交通は既に宇佐神宮方面へのバス路線も運営しており、同じ会社内でのバスと鉄道の競合が生じました。時代の流れと共にモータリゼーションも進展し、鉄道の利用者は徐々に減少傾向となります。経営合理化の観点から、最終的に宇佐参宮線は廃止されることとなりました。

1965年7月に営業廃止が許可され、同年8月14日に廃止が公告されました。そして、公告から一週間後の8月21日をもって、宇佐参宮線はその60年近い歴史に幕を閉じました。

路線データと駅、車両

廃止直前の1965年3月時点の主な路線データは以下の通りです。

路線距離: 豊後高田 - 宇佐八幡間 8.8km
駅数: 6駅
軌間: 1,067mm
複線区間: なし（全線単線）
* 電化区間: なし（非電化）

運行本数は豊後高田 - 宇佐八幡間に10往復半があり、所要時間は豊後高田 - 宇佐間が約11分、宇佐 - 宇佐八幡間が約12〜13分でした。

1965年8月時点の駅は、豊後高田駅、封戸駅、宇佐駅、橋津駅、宇佐高校前駅、宇佐八幡駅の6駅でした。宇佐駅では国鉄（現JR九州）日豊本線との乗り換えが可能でした。

使用された車両には、蒸気機関車、ディーゼル機関車、ガソリンカー、ディーゼルカー、客車、貨車など、多様な種類がありました。特に、国鉄から譲り受けたクラウス製の26号蒸気機関車は、廃線まで使用された後、宇佐神宮の境内に保存されており、当時の面影を今に伝えています。他の車両も、一部は他の大分交通の路線（耶馬渓線など）に転属して使用が続けられました。

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