大判カメラ

大判カメラとは

大判カメラとは、4×5インチ（約102×127mm）以上のシートフィルム（カットフィルム）を使用するカメラの総称です。その大きなフィルムサイズから、高解像度で高品質な写真を得ることができ、主にプロの現場で活用されてきました。

大判カメラの概要

歴史と用途

大判カメラは、かつては雑誌やポスターなど、大きく引き伸ばす必要のある印刷物や、集合写真のような高解像度が求められる分野で重宝されていました。しかし、近年ではデジタルカメラの進歩や、撮影データのデジタル納品が主流になったこと、デジタル編集ソフトでアオリ効果が可能になったことなどから、その需要は減少傾向にあります。

大判カメラの魅力

それでも、大判カメラには、以下のような独自の魅力があり、根強い愛好家が存在します。

多彩なレンズ: 様々なメーカーのレンズが使用可能で、表現の幅が広い。
アクセサリーの規格: 各メーカーである程度規格が統一されており、機材の互換性が高い。
手作業による撮影: 撮影の基本から応用まで、全て手作業で行うため、写真技術の向上が期待できる。
嗜好性の高さ: 高級木材を使用したり、美しいデザインの製品が存在する。

デジタル大判カメラの登場

近年では、大判サイズのイメージセンサーを搭載したデジタルカメラも登場しています。アメリカのベンチャー企業であるLargeSenseが8x10判の機種を発売し、新たな可能性が広がっています。

大判カメラのフォーマット

大判カメラには、様々なフィルムサイズ（フォーマット）が存在します。主なフォーマットは以下の通りです。

4×5in判（シノゴ）: 大判カメラの中でも最も一般的なフォーマット。機材が豊富で、フィルムも入手しやすい。
5×7in判（ゴシチ、ゴナナ）: 4×5in判のカメラの部品を流用したものが多く、専用カメラは少ない。
8×10in判（エイト・バイ・テン、バイテン）: 4×5in判の次に多く使用されるフォーマット。量産カメラは事実上このサイズまで。
8×20in判（エイト・バイ・トゥエンティー）
11×14in判（イレブン・バイ・フォーティーン）
12×20in判（トウェルヴ・バイ・トゥエンティー）
14×20in判（フォーティーン・バイ・トゥエンティー）
16×20in判（シックスティーン・バイ・トゥエンティー）
20×24in判（トゥエンティー・バイ・トゥエンティーフォー）

大判カメラの種類

大判カメラには、スタジオ用のモノレールカメラと、野外撮影用のフィールドカメラ（テクニカルカメラ）があります。フィールドカメラは、機動性を重視するため、アオリ操作はレンズ側のみ可能な機種が多いです。

フィールドカメラ

フィールドカメラには、木製と金属製のものが存在します。木製は軽量で携行性に優れる一方、強度の面では金属製に劣ります。

大判カメラの撮影方法

大判カメラでは、ピントグラス上でピント合わせを行い、F値やシャッター速度を設定した後、フィルムホルダーを装着して撮影します。ピント合わせの際には、冠布（遮光布）を使用し、外部からの光を遮断します。

大判カメラのレンズ

大判カメラのレンズは、レンズボードに取り付けてカメラに装着します。そのため、どのメーカーのレンズでも、レンズボードに取り付ければ使用可能です。基本的には、レンズにフォーカシング機構はなく、カメラ側の蛇腹を伸縮させてピントを調整します。これにより、アオリ撮影が可能になります。一部の超広角レンズには、ヘリコイドが付いているものもあります。

レンズボードの規格

レンズボードにはいくつかの規格がありますが、4×5in判ではリンホフのリンホフボードが、事実上の統一規格となっています。それ以上のサイズでは、ジナーのジナーボードが準統一規格となっています。

大判カメラのシャッター

初期の大判カメラでは、レンズキャップの着脱で露光をコントロールしていました。その後、ソロントンシャッターが使われるようになり、現在ではレンズシャッターが主流です。主なメーカーとしては、コパルが挙げられます。シャッターの大きさには種類があり、対応するレンズに装着する必要があります。また、ジナーや駒村では、カメラ内部にシャッターを置くシステムも提供しています。電子シャッターを用いることで、精密な露光制御が可能になります。

大判カメラの主要メーカー

カメラ本体

ウイスタ: 金属製フィールドカメラや高級木材を使用したテクニカルカメラを製造する日本のメーカー。
トヨ: トヨフィールドを製造する日本のメーカー。
駒村商会 (ホースマン): 金属製ビューカメラ「ホースマンLX」と木製フィールドカメラ「ウッドマン45」を製造していた日本のメーカー。現在はケンコープロフェッショナルイメージングが事業を継承。
カンボ: 廉価ながら高機能なカメラを製造するオランダのメーカー。
ジナー: モノレールカメラの最高峰とされるスイスのメーカー。
リンホフ: 金属製フィールドカメラテヒニカシリーズを製造するドイツのメーカー。
Intrepid Camera: 2014年から製造を開始したイギリスのメーカー。
ディアドルフ: 木製フィールドカメラを製造していたアメリカのメーカー。
エボニー: 木製フィールドカメラを製造する日本のメーカー。高級材を使用。
グラフレックス: スピードグラフィックを製造していたアメリカのメーカー。
タチハラ: 木製フィールドカメラを製造する日本のメーカー。
長岡製作所: 木製フィールドカメラを製造していた日本のメーカー。日本最後の木製大型カメラメーカー。
奥原写真機製作所: 「OKUHARA CAMERA」を製造していた日本のメーカー。

レンズ

カール・ツァイス: ドイツの老舗レンズメーカー。様々な種類のレンズを製造。
コンゴー: 日本のレンズメーカー。
ニッコール: 日本の光学機器メーカーであるニコンのレンズブランド。
ローデンストック: ドイツの老舗レンズメーカー。
シュナイダー・クロイツナッハ: ドイツの老舗レンズメーカー。様々な種類のレンズを製造。
フォクトレンダー: オーストリアの老舗レンズメーカー。現在はコシナがブランドを継承。

シャッター

日本電産コパル: 日本の精密機械メーカー。レンズシャッターの老舗。
デッケル: ドイツの老舗精密機械メーカー。「コンパー」はレンズシャッターのパイオニア。

フィルム

写真フィルム
シートフィルム

関連項目

* 中判カメラ: 大判カメラよりも小型のカメラ。ロールフィルムを使用する。

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