大勢三転考

大勢三転考の概要と背景

『大勢三転考』（たいせいさんてんこう）は、1848年に紀州藩の重臣であり国学者の伊達千広によって著された重要な歴史書です。この著作は、日本の歴史を特有の視点から批評し、外来文化に対する鋭い批判を展開しています。

著者の伊達千広は、明治時代の外務大臣である陸奥宗光の父として広く知られる人物ですが、その前に彼は紀州藩において出世し、財政再建を担った重要な役割を果たしました。千広はまた、本居大平の弟子として国学の研究にも励みました。彼は折からの政争の中で失脚し、長期間にわたって幽閉生活を余儀なくされましたが、明治維新の後に息子の宗光が政府に登用されたことで、罪が許されて東京に移住しました。


この書籍が世に出たのは、東京の陸奥邸で当時の神祇官・福羽美静の目に留まったことがきっかけです。福羽はこの著作の価値を認め、千広を説得して1873年に刊行されることとなりました。

本書の主題

『大勢三転考』は、歴史の流れを3つの時代に分け、各時代を検証している点がユニークです。千広は、日本の歴史が「時の勢」によって変遷したと論じ、それぞれの時代の特徴を具体的に考察しています。

1. 骨（かばね）の代 - これは古代の氏姓制度を指し、血族、居住地、職務が一体となった構造を持っていました。大化の改新によって、この制度は徐々に廃れていきます。この歴史的重要性についても、本書で初めて言及されています。

2. 職（つかさ）の代 - こちらは八色の姓の制定後の律令制度を表します。天皇主導のもとで実施された変革により、官職によって職務が決められ、家系や住居との結びつきが薄らいでいきます。

3. 名（みょう）の代 - 中世の封建制度を示し、この時代には武士主導で実力が土地支配に直結していました。江戸幕府の成立へとつながる重要な時期とされています。

千広は、これらの変遷を「時の勢」と呼び、その必然性を見出していますが、同時にそれを神意として解釈しており、近代的な歴史学が求める根源的な問いには答えを与えていません。しかし、「時の勢」の概念を提起することで、彼は歴史は一つの地点に留まることは不可能であるという真実を伝えようとしています。

結論

『大勢三転考』は、単なる歴史書にとどまらず、日本の伝統文化や国学の価値を強調し、儒教などの外来思想に対する批判を含んでいます。千広の執筆時代の社会背景を理解することで、歴史がどのように繋がり、進化してきたのかを深く探ることができます。この著作は、日本の歴史学が発展する上での一つの節目を築いた重要な作品として、今日もなおその意義を持ち続けています。

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