大区小区制

大区小区制について

大区小区制（だいくしょうくせい）は、日本の明治時代に確立された地方行政の制度です。この制度は、旧来の少数の町村では効率的な行政が行えないとされ、そのために町村を統合し、大区と小区という二つの新しい行政単位を設けることから始まりました。基本的には、府県の下に大区を設け、その下に小区を配置する形が取られましたが、実際の施行においては府県ごとに異なる運用が見られました。

制度の創設と沿革

大区小区制の創設は明治4年にさかのぼります。1871年（明治4年）に政府が全国一律の戸籍を整えるため、区を編纂の単位として設置しました。この段階では、戸長と副戸長がその業務を管理することとされたものの、具体的な区分方法については定められていませんでした。その後、1872年（明治5年）4月には、江戸時代の役人たちを廃止し、新たに戸長と副戸長のポジションを一律に設けることが発表されました。

同年10月には、従来の「区」の名称が「大区」に改称され、複数の町村が統合された小区をその下に設けることが決定されました。この時、東京府では6つの大区と97の小区が設置されましたが、ほかの府県でも様々な区分がなされました。大区と小区にはそれぞれ区長、副区長という役職が置かれ、また小区には戸長や副戸長が配置されました。

実施の状況とその評価

大区小区制が施行される過程においては、いくつかの県が単一区制から大区小区制への切り替えを行いましたが、中には当初から大区小区制を採用したところや、逆に途中から単一区制に戻ったところ、さらに一貫して単一区制を持ち続ける県もありました。このように、地域ごとに様々な運用が見られ、形式的には大区小区制を採用しつつも、実際には役人が配置されなかったり、実質的には無視されることもありました。

また、大区小区制には新政府による「人目一新、旧弊除去」という理念が背景にありましたが、その実施にあたっては多くの現実的な妥協があり、必ずしも政策目標が達成されたわけではありません。旧郡を無視して無理に割り振られた結果、地域の実情と乖離することもあり、著名な研究者・井戸庄三はこの制度の実施状況をいくつかの類型に分類しています。

1. 新潟・愛媛県型：区画化が人為的であり、しばしば改編が求められる状態。
2. 滋賀・静岡県型：地域の歴史を尊重し、民選の戸長が置かれて自治的な機能を有していた。
3. 愛知県型：官選と民選の役人が混在していた。

大区小区制の結果と後の影響

大区小区制は、特に戸籍編纂といった目的には一定の成果を挙げたものの、全体としては地方の実態を無視した制度であり、多くの批判を招きました。地方の慣習や問題を蔑ろにし、中央政府の命令のみを伝達する機関としての役割に限られたため、地方自治を無視する形となりました。このような反省を受け、また自由民権運動の影響もあり、より住民の参加を重視する地方制度の必要性が認識されるようになり、1878年（明治11年）には新しい郡区町村編制法が制定されることになりました。8747

このように、大区小区制は明治時代の日本の地方行政において重要な位置を占め、その後の地方制度の改革に影響を与えた制度でした。

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