戸長

戸長（こちょう）について

戸長（こちょう）は、明治時代前期における日本の行政システムにおいて、区・町・村の行政事務を担当する責任者でした。元々は戸籍法の制定に伴い、1871年に7～8の村を統括する「区」が設定され、各区に戸長と副戸長が設置されました。この新たな体制は、日本における行政の近代化の一環として位置づけられています。

1872年には、旧来の村役人の職称がすべて戸長・副戸長に変更され、戸籍の管理のみならず、国の政策を地域で実施する役割も担うこととなりました。これは、従来の行政区分が不適切だったため、同年に大区小区制が導入され、さらに明確な区分けが行われました。その後も、戸長は地域の重要なリーダーとして、戸籍の管理だけでなく、地券の管理、国税の徴収、義務教育の推進、徴兵事務、さらには公共事業の実施に関与しました。

特に1878年、郡区町村編制法によって、各町村ごとに民選の戸長が選ばれ、戸長役場も設置されることになりました。この制度の下では、戸長には地域名望家や有力者が多く選出され、地域社会において重要な役割を果たしました。しかし、戸長は旧来の村役人という性格と、政府の地方行政官としての側面の二つを併せ持つ存在でもありました。この二重性が、自由民権運動の指導者としての役割を果たす背景に繋がりました。

1884年には、政府は戸長制度の再編を行い、知事の任命による官選制度が導入され、地域の平均500戸に1名の戸長を配置する体制へと移行しました。この結果、地方行政を担う戸長の忠誠心が求められ、政府に従った施策の実施が強化されました。その一方で、戸長の給与改善も行われ、既存の戸長を政府側に取り込むいる努力がなされました。

1890年代に入ると、市制・町村制の導入に伴い、戸長制度は廃止されました。これにより、地方行政は新たな形へと進化を遂げることとなり、戸長の役割は歴史の中に埋もれていきました。戸長制度は、明治時代の日本における地方政治の変革期を象徴する制度であり、地域社会と政府との橋渡し役としての重要な役割を果たしました。日本の行政の成立と発展において、戸長は大きな影響をもたらした存在だったのです。

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