大地 (1930年の映画)

映画『大地』の概要

『大地』（ウクライナ語：Земля、英語：Earth）は、1930年の4月8日に上映されたウクライナ・ソビエト社会主義共和国の無声映画で、監督はウクライナ人のオレクサンドル・ドヴジェンコです。この映画は、ドヴジェンコが手がけた「ウクライナ三部作」の最後の作品として位置付けられています。

主題とテーマ

『大地』は、第一次五カ年計画における集団農業化と、それに対抗する富農たちとの対立を中心に据えています。作品は、豊かなウクライナの農村に暮らす農民たちと、彼らの土地への深い愛着を美しい映像で描写しており、農業と人々の間に存在する神秘的な結びつきを詩的に表現しています。この作品は、自然と人間の関係、そして社会の変革に対する葛藤を象徴的に描き出しています。

初期の反響と評価

公開直後、ソビエト連邦では「自然主義」や「共産主義イデオロギーの不足」を理由に上映禁止となりましたが、ヨーロッパの映画祭では高く評価されました。1958年にはブリュッセル国際映画祭で「史上最高の映画12本」に選ばれ、2015年にはユネスコによって「世界の映画史における5つの主要作品」の一つとして認定されました。また、ウクライナ国内でも歴史的に重要な作品として評価されており、『ウクライナ映画の歴史における100の最高の映画』では第2位にランクインしています。

ストーリーのあらすじ

物語はウクライナの農村を舞台に、集団農業化が始まる頃の様子を描いています。老農夫セミョン・トゥルベンコは、家族に囲まれて静かに最期を迎えますが、息子のオパナスと孫のヴァシーリは、村で導入されるトラクターと集団農業化の議論に巻き込まれることになります。村には、富裕層の農民である富農（クルクーリ）が存在し、彼らは集団化に反対しています。

ヴァシーリは共産主義青年団の一員として、トラクターを使い富農の土地を耕すことで集団化を推進しますが、富農のホマに嫉妬され、暗殺されてしまいます。この悲劇は村にも衝撃を与え、オパナスは犯人を探し出そうとしますが、実行犯のホマは罪を認めつつも村人に無視されます。

物語はヴァシーリの恋人ナターリャの悲しみ、村人たちの新しい歌による葬送、そして新たな命（ヴァシーリの母の出産）の誕生を通じて展開し、雨が降る農村の風景で幕を閉じます。この作品は、集団化の勝利を描きつつも、人間と自然の断絶や、ウクライナ農民と土地の絆を深く探るものとなっています。

制作の詳細

『大地』の脚本は1929年5月に作成され、同年の6月からポルタヴァ州で撮影が開始されました。キーウやジョージアでも追加撮影が行われ、最終的に編集が1930年1月に完成しました。製作費は104,000カルボーヴァネツィで、当時のウクライナ映画の中でも高額な作品とされていました。音楽は当初、レフ・レヴツキーによるものでしたが、後に多くのバージョンで新たな音楽が付け加えられました。

評価と影響

『大地』はドヴジェンコの最高傑作として国際的に高い評価を受け、その影響は今も続いています。映画は単なる視覚的作品にとどまらず、ウクライナの文化的、歴史的文脈をも反映しています。批評家たちはその詩的な表現や哲学的な深さを評価し、映画史における重要な作品の一つとして位置づけています。

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