大塩天満宮

大塩天満宮：歴史と伝統が息づく播磨の神社

兵庫県姫路市大塩町に鎮座する大塩天満宮は、菅原道真公を主祭神とする天満宮です。正式名称は天満神社で、旧社格は郷社。秋季例大祭の際に奉納される力強い毛獅子は、兵庫県の重要無形民俗文化財に指定されており、この神社の大きな魅力となっています。

由緒と歴史：幾重にも重なる信仰の層

神社の由緒によると、菅原道真公が大宰府へ左遷される途中、この地に立ち寄ったことが起源とされています。天神山（円山）山麓にあった伊屋明神（天穂日命、大己貴命）に、道真公が合祀され、後に道真公が主祭神となったと伝えられています。

しかし、元宮については諸説あります。1つ目は、天神山に天満神社が創建され、後に伊屋明神や賀茂明神（現在の加茂神社）が合祀されたという説。2つ目は、旧小林村の賀茂明神が元宮で、道真公と伊屋明神が合祀されたという説です。いずれの説も、近世における南方の発展に伴い、現在の場所へ遷宮されたとする点で一致しています。

『播磨国内神名帳』には、大塩天満宮氏子地域内に伊屋明神と賀茂明神が存在したことが記されています。現在の加茂神社は、氏子地域外である別所町北宿に鎮座し、中世の大塩荘（大塩・別所・北宿・小林・北脇・西浜・牛谷の各旧村）内での氏子別れや分祀、合祀の歴史を示唆しています。

明治時代には、天満宮の神宮寺であった天台宗玉樹山潮照寺とその末寺・実相院が廃寺となりました。また、松浦武四郎の選んだ聖跡二十五霊社の1つに、この神社の岩神社が檜笠天神として選ばれたという興味深い歴史もあります。平成10年には、大塩駅前の旧社殿地から駅南側の現在地へ遷宮されました。

境内社：多彩な神々が鎮座する聖域

大塩天満宮境内には、数多くの境内社が祀られています。主な境内社としては、伊勢神社（天照皇大神、八幡大神、春日大神）、豊受神社（豊受大神、恵美酒大神、熊野大神）、塩釜神社（味耜高彦根神、塩土爺神、住吉大神）、稲荷神社（宇迦之御魂神）、愛宕神社（迦具土神）などがあり、それぞれの神々が信仰を集めています。

年間行事：盛大な祭りと伝統の神事

大塩天満宮では、一年を通して様々な祭事が執り行われています。特に、10月14日、15日に行われる秋季例大祭は、見どころ満載です。一ツ物神事、御面掛神事といった独特の神事や、屋台（太鼓台）練り、そして圧巻の毛獅子舞が奉納されます。

一ツ物神事は、氏子代表の稚児が神前にて献酌を行う神事で、古来からの信仰の名残を今に伝えています。御面掛神事は、翁が謡い舞う神事で、能楽の要素も取り入れられています。これらの神事は、神霊の憑依や「童」や「翁」が神に近い存在であるという古い信仰に基づいています。

その他、歳旦祭、初天神祭、天神祭、七五三祭など、年間を通して多くの祭事が行われ、地域の人々の信仰の深さを示しています。11年毎に行われる国恩祭は、天保の大飢饉をきっかけに行われるようになった臨時祭で、旧印南郡と旧加古郡の神社が順番に催行する輪番制となっています。

屋台：地域の歴史と伝統を伝える華麗な装飾

大塩町と北浜町の6地区から屋台が練り出されます。各地区の屋台は、それぞれ独特のカラーと装飾を施されており、地域の個性と歴史が感じられます。近年では新調された屋台も多く、伝統を守りながら現代へと受け継がれていく様子が見て取れます。

毛獅子：躍動感あふれる伝統芸能

大塩天満宮の秋季例大祭で奉納される毛獅子は、その迫力と美しさで多くの人々を魅了しています。毛で覆われた獅子が力強く舞う姿は、古くから伝わる伝統芸能の粋を示しています。屋台を持つ6地区に加え、北浜町牛谷、別所町小林の計8頭の毛獅子が奉納され、昭和63年には姫路市、平成元年には兵庫県の重要無形民俗文化財に指定されました。各地区の毛獅子にはそれぞれに物語が込められており、独特の舞いが繰り広げられます。

大塩天満宮は、歴史と伝統に彩られた神社であり、その神事や境内社、そして毛獅子舞は、地域の人々の信仰と文化の深さを象徴するものです。訪れる人々に、古き良き日本の伝統と文化に触れる機会を与えてくれるでしょう。

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