大多喜城

大多喜城の概要

大多喜城は、千葉県夷隅郡大多喜町に位置する、戦国時代から江戸時代にかけて存在した日本の城（平山城）です。当初は小田喜城と呼ばれていましたが、後に徳川家康の家臣である本多忠勝によって大規模な改築が行われ、近世城郭として生まれ変わりました。

歴史

小田喜城から大多喜城へ

大永元年（1521年）に真里谷信清によって小田喜城として築かれたのが始まりとされています。かつては、現在の大多喜城は本多忠勝が築いたものと考えられていましたが、近年の発掘調査により、現在の城の地下に大規模な遺構が発見され、信清の小田喜城が基になっていることが明らかになりました。ただし、戦国時代と江戸時代では縄張りが異なり、江戸時代には裏山の栗山が城の一部から除外されています。

正木氏の支配と里見氏の内紛

信清の後を継いだ真里谷朝信の時代には、里見氏の武将である正木時茂によって城が奪われ、以後3代にわたって正木氏が支配し、上総国東部支配の拠点となりました。しかし、天正9年（1581年）には里見氏の内紛によって憲時が殺害され、その後は里見氏の代官が派遣されました。

本多忠勝による大改築

天正18年（1590年）、里見氏が惣無事令違反により上総国を没収されると、同国は徳川家康に与えられ、その配下であった本多忠勝が城主となり、大多喜藩10万石が成立しました。忠勝は里見氏の北上を阻止するため、突貫工事で3層4階の天守を持つ近世城郭へと大改築を行い、城下町を建設しました。これが現在の大多喜城の原型となっています。

廃藩と再建

その後、大多喜藩の拠点として幕末まで重要な役割を果たしましたが、元和5年（1619年）に藩主が拠点を移したことで一時的に廃藩となり、城は荒廃しました。寛文11年（1672年）に阿部正春が1万6千石で入城した際、幕府から再建命令が出たものの、当時の記録では「一重の塀もないありさまで、門や櫓などもない」と記されており、城は荒廃したまま長く支配されていたようです。元禄3年（1690年）の記録にも同様の記述が見られます。阿部家以降の城主が多少の増築を行ったようですが、山頂の天守は荒廃したままだったと考えられています。

天守の焼失と再建

天保13年（1842年）には天守が焼失し、代わりに2層の「神殿」が建てられたとされています。明治3年（1871年）に城は取り壊され、本丸も削平されました。その後、昭和41年（1966年）に本丸跡が千葉県の史跡に指定され、昭和50年（1975年）には天保6年（1835年）の図面を基に天守が再建され、内部には千葉県立総南博物館（現在の千葉県立中央博物館大多喜城分館）が設置されました。再建された天守は鉄筋コンクリート造りの三層四階建てです。

現在の状況

2017年（平成29年）4月6日、「続日本100名城」に選定され、歴史的価値が高く評価されています。また、千葉県立中央博物館大多喜城分館は、2021年12月27日から長期休館に入り、今後は大多喜町の町営博物館として運営される予定です。

天守に関する議論

天保13年（1842年）の天守焼失後、「神殿」と呼ばれる建物が建てられたとされていますが、その建築は粗末だったのではないかという見解があります。また、天守の存在自体についても議論があり、非実在説も存在します。その根拠としては、寛文年間の絵図に天守が描かれていないことや、当時の記録に「塀もない」と記述されていること、ドン・ロドリゴの記録に天守が登場しないこと、発掘調査で天守石垣の痕跡が見つからなかったことなどが挙げられます。

一方で、2通りの天守絵図が存在することや、本丸が削平されたために石垣の痕跡が見つからないという反論もあり、天守の存在については現在でも結論が出ていません。そのため、書籍によっては再建天守を「復元」「復興」「模擬」と表現が分かれています。

遺構

本丸付近には土塁、大手門付近には堀跡が残り、二の丸には大井戸が残っています。大井戸は直径17メートルにも及ぶ巨大なもので、本多忠勝が築城した際に作られ、江戸時代には井桁と滑車を備えた構造で、水が汲み上げられていました。本丸跡と大井戸は、「上総大多喜城本丸跡 附 大井戸、薬医門」として千葉県指定史跡に指定されています。また、大多喜高校には二の丸御殿の薬医門が現存しています。

再建された天守は、天保13年模写の三層天守絵図などを参考に、江戸時代の一般的な天守を推定復元したものです。

その他の情報

所在地: 千葉県夷隅郡大多喜町
指定文化財: 千葉県指定史跡「上総大多喜城本丸跡 附 大井戸、薬医門」
* 続日本100名城: 122番

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