大夫黒

源義経愛馬 大夫黒：その生涯と伝説

源義経の愛馬として名高い大夫黒は、源平合戦においてその勇姿を見せた名馬です。その生涯には、幾多の伝説と謎が織り込まれています。

謎に包まれた誕生と下賜

『吾妻鏡』の記述によると、大夫黒は後白河法皇の御厩にいた名馬であったとされています。義経に下賜された経緯は明らかではありませんが、その卓越した能力が認められ、義経の手に渡ったことは間違いありません。大夫黒の産地については諸説あり、岩手県一関市千厩町説と、三戸郡三戸町住谷野説が有力視されています。千厩町説では、奥州藤原氏から義経に贈られたという説も存在します。千厩町は古くから軍馬の産地として知られ、源義家が前九年の役で千頭の軍馬を繋いだという伝承や、奥州藤原氏の私牧「萩の里」が存在した歴史が、この説を裏付ける材料となっています。

黒毛の愛馬と「大夫」の称号

義経が検非違使少尉（判官・左衛門尉）に任官した際に、黒毛の大夫黒は、左衛門尉の位階の別称である「大夫」からその名を取ったとされています。義経は、大夫黒を戦場へ連れて行き、その優れた能力を駆使して数々の勝利を収めました。特に有名なのは、一ノ谷の戦いの鵯越の逆落しでしょう。険しい山道を駆け下り、敵を翻弄した大夫黒の姿は、まさに伝説の域に達しています。

佐藤継信との絆と最期

屋島の戦いで佐藤継信が討死すると、義経は継信の供養をしてくれた志度寺の覚阿上人に大夫黒を贈りました。その後、鴨部馬次の極楽寺に預けられていた大夫黒ですが、伝説によると、ある日突然厩舎から抜け出し、継信の墓前で倒れているのが発見されたといいます。現在、高松市牟礼町牟礼の洲崎寺には、佐藤継信と大夫黒の墓が並んで存在しており、二人の深い絆を示しています。

現代への継承

大夫黒の活躍は、多くの文献や伝承に記録され、人々の記憶に深く刻まれています。千厩町には大夫黒顕彰碑が建立されており、2023年3月にはポケットパークにモニュメントが完成しました。これらのモニュメントは、大夫黒の功績を称え、その記憶を後世に伝える役割を担っています。大夫黒の物語は、単なる名馬の伝記にとどまらず、義経や佐藤継信との深いつながりを示す歴史ロマンとして、人々の心に語り継がれています。その生涯は、勇猛さと忠誠心、そして伝説に彩られた、まさに「名馬」と呼ぶにふさわしいものでした。 現在でも千厩町では、大夫黒を象徴とする様々な取り組みが行われており、地域活性化にも貢献しています。その足跡は、歴史と伝説が交錯する、魅力的な物語として語り継がれていくことでしょう。

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