大姥局

大姥局の生涯と影響

大姥局（おおうばのつぼね）は、大永5年（1525年）から慶長18年1月26日（1613年3月17日）まで生き、江戸幕府の第2代将軍、徳川秀忠の乳母として知られています。彼女は今川氏の家臣、岡部貞綱の娘で、夫は穴山梅雪の家臣である川村善右衛門重忠でした。

大姥局は自身の生涯を通じて、江戸幕府の重要な人物となるべく、さまざまな変遷を経て成長しました。初めに彼女の夫は、今川家に仕えていましたが、今川家が衰退すると、彼らは小田原北条氏へ仕官します。最終的には甲斐の武田氏に仕官し、駿河方面を担当しました。しかし、丈夫の死後、大姥局は駿河の岡部でひと時を過ごさざるを得ませんでした。

その後、豊臣秀吉の招きで上方へと移動し、彼女は徳川家の一員としての運命を掴みました。生母を幼いときに失っていた家康の息子、秀忠の乳母として彼女は家政に関与することとなります。大姥局はその後、大奥で権力を持ち、江戸幕府の草創期において不可欠な存在となりました。彼女は武蔵国内から2千石の化粧領を得て、その肉体的な存在と精神的な影響力を証明しています。

また、彼女は法華宗の信徒であったことが知られています。彼女の発願により、慶長13年（1608年）には池上本門寺の五重塔（重要文化財）が建立されました。大姥局は「正心院日幸尼」という法名も有しています。

大姥局には子供が4人おり、息子の一人、川村荘八（岡部荘八）は、慶長2年（1597年）に本多政重との間で問題を起こし、その結果、命を落としました。彼女の娘である岡部局は、上杉謙信の家臣である大石長次に嫁ぎ、その子の重久が岡部家を継承しました。

大姥局の影響は直系の家族に限られず、岡部長起という福井藩の家老職を継ぐ子孫にも受け継がれています。この長起は、母方の岡部の姓を名乗ひ、福井藩士として活躍しましたが、悲劇的な最期を迎えています。

秀忠の隠し子

秀忠は、当時の最高権力者として江戸幕府を支配していましたが、その権力とは裏腹に嫉妬深い妻、江（崇源院）を持っていました。そんな彼は大姥局の侍女であった静（後の浄光院）との関係を持ち、静を妊娠させてしまいます。大姥局は静を守り、崇源院の手下から逃がし、無事に子を出産させました。この子が後に生まれた幸松であり、武田氏の出身であった見性院によって養子として育てられました。

幸松はその後、秀忠に密かに認知されますが、徳川家の中には留まれずに、最終的には高遠藩の保科氏の養子となりました。この経歴は、後に彼が幕府の重鎮となる運命を示しています。彼は会津松平家の祖となり、名宰相として名を馳せました。

演じた俳優

大姥局の生涯は、映像作品でも描かれています。映画「女帝 春日局」（1990年、東映京都撮影所）では草笛光子が、大河ドラマ「葵 徳川三代」（2000年、NHK）では草村礼子が、そして「江〜姫たちの戦国〜」（2011年、NHK）では加賀まりこが演じています。これらの作品を通して、大姥局の複雑な人生や権力の行使、家族との深いつながりを知ることができます。

大姥局は、江戸幕府の初期において特異な存在として、その影響力を持っていました。彼女の生涯は、権力関係や家族愛、そして社会的地位の変遷を象徴するものであり、日本史において重要な位置を占めています。

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