大学は出たけれど

『大学は出たけれど』

本作は『大学は出たけれど』というタイトルで、1929年と1955年にそれぞれ異なる監督によって制作された日本映画です。これらの作品は、時代背景としての就職難をテーマにしており、社会的な問題をコメディタッチで描いています。

小津安二郎版（1929年）

まず、1929年に公開された小津安二郎版についてです。この映画は、昭和初期にあたる日本の不況下での大学卒業者の就職活動を描いています。当時の就職率が約30%という厳しい状況にある中、主人公の徹夫は、職が見つからず悩む日々を送ります。彼は母親に「就職した」と嘘の電報を送り、その結果、期待に胸を膨らませた母が上京してくることになります。そこで徹夫は、自らの嘘を打ち明けられずに苦しむことになります。

この映画は当初、清水宏が監督を予定していましたが、実際には小津が手がけ、彼の独自の視点が早くも現れています。ストーリーはコメディ要素が豊富でありながら、日常生活の細かな描写が印象的です。残念ながら、現在残存しているのはわずか11分の断片的なフィルムのみですが、その中には庶民の日常生活がリアルに描かれています。

キャスト

• - 野本徹夫：高田稔
• - 野本町子：田中絹代
• - 友人杉村：大山健二

その他、多くのキャストが名を連ね、映画に厚みを持たせています。

野村芳太郎版（1955年）

次に、1955年に公開された野村芳太郎版です。この作品も就職難をテーマにしていますが、描き方やキャラクターは異なります。野村監督は、より現代的な視点から物語を展開し、キャストも一新されています。
このヴァージョンにおいても、大学を卒業した若者たちが社会に出る際の苦悩が描かれ、特に家族との関係や友情が重要な要素となっています。新たな世代のキャストによる演技が、物語に新鮮さをもたらしています。

キャスト

• - 高田彌左衛門：斎藤達雄
• - 高田松枝：吉川満子
• - 村瀬良作：明石潮

このように多彩なキャストが出演し、映画に彩りを添えています。

社会背景

両作品とも、就職氷河期や社会不安の時代を背景に持ちながら、当時の人々が直面した現実を描き出しています。特に、1929年の映画は昭和金融恐慌という歴史的コンテキストの中で制作されたため、時代への鋭い洞察が伺えます。また、1955年の作品は戦後の復興期に生まれたものであり、その時代ならではの社会的課題を映し出しています。

まとめ

『大学は出たけれど』は、それぞれ異なる時代に制作されたものの、共通して就職難というテーマを扱い、見る者に深い感慨を与える作品です。時代背景を理解することで、より楽しむことができるでしょう。

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