大山崎瓦窯跡

大山崎瓦窯跡：平安京の瓦生産を支えた官営窯

京都府乙訓郡大山崎町に位置する大山崎瓦窯跡は、平安時代の瓦生産の中心地として重要な役割を担った遺跡です。水運と陸運の要衝であるこの地で、平安宮をはじめとする宮殿や離宮に供給される瓦を焼成していました。

発見と調査

2004年、宅地造成に伴う発掘調査で偶然発見された大山崎瓦窯跡では、12基もの瓦窯の存在が確認されました。これらの窯は、平安時代前期に活動していたと推定されており、当時の高度な瓦生産技術を知る上で貴重な資料となっています。2006年には国の史跡に指定され、2014年には追加指定が行われ、その歴史的価値の高さが認められました。

平安宮への瓦供給

大山崎瓦窯跡から出土した軒瓦は、平安宮の朝堂院をはじめ、嵯峨院や河陽離宮といった重要な建造物にも使用されていたことが分かっています。当時の平安京周辺では多くの瓦窯が稼働しており、大量の瓦生産によって平安京の造営を支えていました。大山崎瓦窯跡は、そうした官営瓦窯の重要な一つとして、平安京の都市発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

他の瓦窯跡との関連

大山崎瓦窯跡から出土した瓦は、栗栖野瓦窯跡、西賀茂瓦窯跡、吉志部瓦窯跡など、他の平安時代の瓦窯跡から出土した瓦と比較研究されています。その結果、瓦に文様を付けるための笵（はん）や、瓦作りの技術を持つ工人の移動などが推測され、官営瓦窯同士の技術交流や連携を示す重要な証拠となっています。一方、大山崎瓦窯跡独自の笵を用いて製作された瓦の存在も確認されており、平安時代前期の瓦供給に関する新たな知見をもたらしています。

遺跡の保存と公開

1～6号窯および9～12号窯の10基の瓦窯は、埋没保存されています。その周辺は公園として整備され、2020年6月に開園しました。公園内では、5号窯の発掘当時の写真を原寸大で再現した陶板展示や、6号窯の基礎部分の復元（予定）などが見られます。他の瓦窯跡の位置はオタフクナンテンの植栽で示され、排水溝や作業場、掘立柱建物などの遺構も彩色表示によって分かりやすく解説されています。これらの取り組みによって、貴重な歴史遺産である大山崎瓦窯跡を後世に伝える努力が続けられています。

まとめ

大山崎瓦窯跡は、平安時代前期の瓦生産の実態を克明に示すと同時に、他の瓦窯跡との比較研究を通じて、当時の官営瓦窯の生産体制や技術交流の実態を明らかにする上で極めて重要な遺跡です。この遺跡の発見と調査、そして保存・公開の取り組みは、平安京の歴史と文化を理解する上で大きな貢献を果たしています。今後の研究の進展によって、さらに多くの知見が得られることが期待されます。

もう一度検索