大山廃寺跡

大山廃寺跡について

愛知県小牧市北東部の山中にひっそりと佇む大山廃寺跡は、かつて「大山峰 正福寺」という寺院が存在した場所です。地元では「大山寺」とも呼ばれ、1929年には国の史跡に指定されています。

概要

現在、寺院の建物は全く残っていませんが、かつて僧侶が生活していたとされる平坦な場所には、塔を支えるために用いられたと考えられる5つの礎石が残っています。また、この寺院と深い関わりがあったとされる児神社の境内からは、近年になって平安時代の掘立柱建物3棟と中世の礎石建物2棟が発掘されており、寺院の歴史を物語る重要な手がかりとなっています。これらの遺跡からは、瓦や陶磁器など数多くの遺物も発見されており、現在は小牧市歴史館で展示・保存されています。

歴史

大山廃寺の創建は7世紀後半と推定されています。最盛期には「西の比叡山延暦寺、東の大山寺」と称されるほどの隆盛を誇りました。しかし、1152年に比叡山延暦寺と三井寺の間で起こった法論の際、三井寺の僧徒によって襲撃され、寺は無残にも焼き払われました。この襲撃で、寺の建物は跡形もなく焼失し、住職と2人の稚児が命を落とすという悲劇に見舞われました。その後、寺は細々と存続しましたが、15世紀中頃には完全に廃絶しました。

年表

7世紀後半 - 寺院創建
1152年 - 三井寺の僧徒による襲撃で寺が全焼
1155年 - 児神社創建
15世紀中頃 - 寺院が完全に廃絶
1571年 - 江岩寺創建
1928年 - 発掘調査で塔の礎石や瓦片などが発見
1929年12月17日 - 国の史跡に指定
1974年～1978年 - 小牧市による本格的な調査で、児神社から平安時代と中世の建物跡が発見。史跡範囲が拡大

その他の情報

大山廃寺跡から少し下った場所にある江岩寺には、正福寺の所蔵品と考えられている仏像や文化財が多数所蔵されています。また、大山廃寺跡を含む一帯地域は、愛知県の「自然環境保全地域特別地区」に指定されており、豊かな自然が保護されています。

所在地

愛知県小牧市大字大山字郷島・仲島

交通手段

こまき巡回バス「児神社前」停留所下車、徒歩約20分

関連書籍

『まぼろしの大山廃寺展解説』 小牧市経済福祉部商工課/編（1972年）
『大山廃寺遺跡概説』 入谷哲夫/著（1973年）
『大山廃寺発掘調査中間概報1』 小牧市教育委員会/編（1975年）
『大山廃寺発掘調査中間概報2』 小牧市教育委員会/編（1976年）
『大山廃寺発掘調査中間概報3』 小牧市教育委員会/編（1977年）
『大山廃寺発掘調査中間概報4』 小牧市教育委員会/編（1978年）
『大山廃寺発掘調査報告書』 小牧市教育委員会/編（1979年）

関連項目

大山古墳群

外部リンク

大山廃寺跡（小牧市役所） - ウェイバックマシン（2009年7月14日アーカイブ分）
大山廃寺跡（小牧市教育委員会）

大山廃寺跡は、歴史のロマンと静寂な自然が調和する場所です。訪れる際には、かつてこの地に存在した寺院の壮大な歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

もう一度検索