大岡忠固

大岡忠固：岩槻藩を治めた知略と文化の藩主

大岡忠固は、江戸時代後期に武蔵岩槻藩の第6代藩主として活躍した大名です。彼は、伊勢八田藩主・加納久周の五男として生まれ、鈴木大学と名乗っていましたが、兄である大岡忠正の養子となり、大岡家を継ぐこととなりました。

忠正の没後、文化13年（1816年）に家督を相続した忠固は、藩主として数々の重要な役割を担いました。文政4年（1821年）には日光祭礼奉行、翌年には奏者番を歴任し、幕府内での地位を盤石なものにしていきます。

彼の治世において大きな出来事となったのが、天保7年（1836年）に発生した百姓一揆です。米価の高騰を背景に勃発したこの一揆を、忠固は巧みな手腕で鎮圧することに成功しました。この功績が認められ、同年、若年寄に昇進。さらに天保15年（1844年）には江戸城本丸の普請奉行を務め、その手腕を買われ3000石の加増を受けています。

忠固の活動は、国内政治にとどまりませんでした。アヘン戦争で清が敗戦した後の情勢変化を受け、幕府の命により江戸湾警備の強化に大きく貢献しました。具体的には、大砲や小銃の鋳造を指示し、藩領である上総国・安房国に藩士を派遣して海上警備にあたらせました。しかし、この大規模な警備強化は藩の財政を圧迫する結果となり、その後の藩政にも影を落とすことになります。

政治家としてだけでなく、文化人としての側面も持ち合わせていた忠固は、嘉永5年（1852年）に江戸を訪れた公卿の接待役を務め、江戸市中を案内しました。この経験を基に著されたのが『船橋紀行』です。この紀行文は、当時の江戸の街の様子や文化を知る上で貴重な資料となっています。しかし、同年、忠固は病に倒れ、この世を去りました。家督は三男の忠恕が継承することになります。

大岡忠固は、養子として大岡家に入り、数々の困難を乗り越えながら藩主としての役割を果たしました。百姓一揆の鎮圧、江戸湾警備の強化、そして『船橋紀行』の著述など、彼の生涯は政治的才能と文化への関心の両面を反映した、多彩で興味深いものでした。彼の功績は、岩槻藩の歴史において、そして江戸時代後期の歴史においても重要な位置を占めていると言えるでしょう。1000文字以上。1400文字程度

もう一度検索