奏者番

概要

奏者番（そうじゃばん/そうしゃばん）は、江戸幕府および諸藩に設置された役職の一つです。主な役割は、城内における武家の礼式を管理することでした。

具体的には、大名や旗本が将軍に謁見する際、あるいは在国の大名が献上品を携えて使者を江戸城に派遣した場合に、その氏名と献上品の内容を確認し、将軍に報告しました。将軍が下賜を行う際には、その伝達役も担いました。さらに、大名の転封などの重要な決定や、大名家に不幸があった際には、幕府の使者として派遣されることもありました。徳川将軍家や御三家の法要において、将軍が参列できない場合には、その代理として参列することも重要な職務でした。また、将軍の御前で元服を行う大名や世子に対して、礼儀作法を教える役割も担っていました。

幕府における奏者番の定員は特に定められていませんでしたが、一般的には20名から30名程度であったとされています。通説では、慶長8年（1603年）に、足利典礼に詳しい室町幕府奉公衆出身の本郷信富が任命されたのが最初とされていますが、それ以前に任命されたとする異説も存在します。後に、譜代大名が就任する役職となり、多くの場合、初任の役職となるため、大名にとっては出世の登竜門的な役職とみなされていました。また、大名や旗本と将軍との連絡役となるため、大[[目付]]や目付と並ぶ枢要な役職でもありました。

奏者番のうち4名は、寺社奉行を兼任していました（万治元年（1658年）以後）。詰衆からの登用が多く、江戸城内での詰席は芙蓉の間でした。元禄4年（1691年）には、畠山基玄が大名ではないにもかかわらず登用されましたが、これは室町幕府管領家の出自を将軍徳川綱吉が重んじたことによる特例でした。文久2年（1862年）閏8月、江戸幕府の文久の改革により、一旦廃止されましたが、翌年10月に復活しています。

諸藩の奏者番

諸藩においても、奏者番または奏者役を設置している藩が存在しました。ただし、越後長岡藩のように、奏者番から取次という役職名に改称した事例や、仙台[[藩]]のように、奏者役を申次に改名した事例もあります。戸田氏時代の大垣[[藩]]の奏者番は藩主直轄であり、人員は8名から13名程度でした。

参考文献

美和信夫「江戸幕府奏者番就任者に関する検討」『麗澤大学紀要』42号、1986年。
美和信夫「江戸幕府奏者番就任者の数量的考察」『日本歴史』466号、1987年。
松尾美恵子「奏者番」『日本史大事典』 4巻、平凡社、1993年。ISBN 978-4-582-13104-8。
北原章男「奏者番」『国史大辞典』 8巻、吉川弘文館、1987年。ISBN 978-4-642-00508-1。
長岡市 編『長岡市史』1931年。
児玉幸多『近世』日本書籍〈日本歴史の視点3〉、1973年。
仙台市史編纂委員会 編『仙台市史 通史4 近世2』2003年。

関連項目

申次衆

外部リンク

* 『奏者番』 - コトバンク

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