加納久周

加納久周：寛政の改革を支えた八田藩主

加納久周は、江戸時代後期を代表する大名の一人です。伊勢国八田藩の第3代藩主として、その名を歴史に刻みました。幼名は久弥。上総国勝浦藩主・大岡忠光の次男として誕生しました。

養子入りと家督相続

明和9年（1772年）、異例の経歴を歩むことになります。伊勢八田藩第2代藩主・加納久堅の養子として迎え入れられたのです。久堅の実子・久致が夭折したことがその背景にあります。養子となるにあたり、久堅の養女（松平信礼の娘）と結婚。加納久周と名乗り、将軍・徳川家治に拝謁し、従五位下・備中守に叙任されました。天明6年（1786年）、養父・久堅の死去に伴い、家督を相続し、八田藩の第3代藩主となります。

寛政の改革への貢献

久周の生涯における大きな転機は、天明7年（1787年）に訪れます。陸奥白河藩主で、後に老中首座となる松平定信の信頼を得て、定信を補佐する側衆に抜擢されたのです。これは、寛政の改革における重要な役割を担うことを意味しました。定信による改革は、財政再建や社会秩序の安定化を目的とした大規模なものでした。久周は、側衆としてその推進に大きく貢献しました。同年、大番頭を兼務し、遠江守に転任。寛政5年（1793年）には若年寄並に異動し、更なる重責を担います。寛政8年（1796年）には、改革における功績が認められ、3000石の加増を受け、知行高は1万3000石に達しました。

晩年と隠居

寛政9年（1797年）に若年寄並を辞した後も、久周の活躍は続きます。寛政12年（1800年）、伏見奉行に就任。この役職は、京都の治安維持や行政を担う重要なものでした。文化4年（1807年）に伏見奉行を辞した後、文化5年（1808年）、嫡男の久慎に家督を譲り、隠居生活に入ります。そして、文化8年（1811年）、59歳でその生涯を終えました。

功績と人物像

加納久周は、養子として加納家に入り、藩主として手腕を発揮し、寛政の改革に貢献した人物です。松平定信への忠誠心と政治的才覚は高く評価されています。また、寛政年間には、上総国長柄郡一宮で貯水池（洞庭湖）の造成に着工するなど、治水事業にも尽力しました。その功績は、八田藩の発展に大きく寄与したと言えるでしょう。

系譜

父：大岡忠光
養父：加納久堅
正室：禎（加納久堅の養女、松平信礼の娘）
子女：加納久慎（長男）、有馬久保（次男）、大岡忠正（三男）、本多忠和（四男）、大岡忠固、延姫（松平信順継室）、稲葉正武継室など

関連事項

寛政の三忠臣

加納久周は、その生涯を通じて、養子という立場で困難を乗り越え、藩主として、そして幕府の要職として活躍しました。寛政の改革という激動の時代を生き抜き、その功績は後世に語り継がれるべきものです。

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