大峠 (山形県・福島県)

大峠：歴史と静寂に包まれた峠道

大峠は、山形県と福島県を結ぶ標高1,156mの峠です。かつては会津地方と置賜地方を結ぶ主要な道路でしたが、現在は大峠道路が開通し、冬季でも通行可能な唯一のルートとなっています。この記事では、新道開通によってその役割を終えた旧道の歴史と現状について解説します。

大峠道路（新道）の開通

大峠道路は、大峠を通らず、飯森山の近くを大峠トンネルでバイパスしています。この道路の開通により、福島県喜多方市と山形県米沢市の間が一年を通して通行できるようになりました。37年の歳月をかけて2010年に全線開通し、地域間の交通を大きく改善しました。

旧道の歴史

旧道は、明治時代に三島通庸によって開削された道路を指します。大峠道路から分岐し、入田付、根小屋集落を経由して、大峠隧道（昭和9年竣工）を通り県境を越えます。かつては幅が狭くカーブが多い、いわゆる「酷道」でした。豪雪地帯であるため、冬季は5ヶ月以上も通行止めとなり、主要ルートとしての役割を果たすことは困難でした。

旧道の閉鎖と現状

1992年8月、大峠道路のトンネル開通に伴い、旧道は通行止めとなりました。通行止め区間は、福島県喜多方市根小屋付近から山形県の大猿倉沢橋付近までです。一時期、福島県側のバリケードが半開状態だったため、四輪車での走行も可能でしたが、現在は強固なゲートが設置され、関係者以外の立ち入りは一切できなくなっています。

福島県側はジグザグに登る線形ですが、山形県側は等高線に沿って登る線形です。山形県側の路肩は断崖絶壁となっており、過去には転落死亡事故も発生しています。未舗装区間だった峠付近から大猿倉沢付近は、落石や崩落が多発し、比較的早い時期に廃道化しました。

2012年10月には国道標識が撤去され、旧道大峠区間は国道指定から外れて市道に降格しました。山形県側は2011年1月28日付けで廃道となっていますが、福島県側は東日本大震災の災害復旧工事が行われました。


大峠の旧道は、その歴史と自然の厳しさを今に伝える貴重な存在です。新道の開通によってその役割を終えましたが、峠道には忘れ去られた歴史と静寂が残されています。


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