大島大火

大島大火

大島大火（おおしま たいか）は、1965年（昭和40年）1月11日、東京都大島町に属する伊豆大島の元町地区で発生した大規模な火災を指します。別称として「伊豆大島大火」と表記されることもあります。この火災により、島の主要な集落である元町の中心部は壊滅的な被害を受けました。

火災の発生と拡大

火災が発生した1965年1月11日の伊豆大島は、強い風が吹き荒れており、強風波浪注意報が出されるほどの悪天候でした。その日の午後9時頃、元町桟橋近くで小さな火災が発生しましたが、消防隊の迅速な活動によりすぐに鎮火されました。

しかし、それから約2時間後の午後11時10分頃、再び元町桟橋に近い寿司店から火の手が上がりました。この火災の出火原因は、店にいた酔客が2階の客間で使用していた石油ストーブを誤って倒したことによるものでした。午後11時15分には火災発生を告げる半鐘が集落に響き渡りましたが、すでに状況は深刻化していました。

出火場所が元町集落のもっとも風上側に位置していたことに加え、最大瞬間風速が36.2メートルを超えるという猛烈な海風が炎をあおったため、火災は瞬く間に拡大しました。風に乗った火の粉は広範囲に飛び散り、炎は海側から山側へと吹き上げるように勢いを増し、元町地区全体が真っ赤に染まる光景となりました。この火勢の強さは、約30キロメートル離れた対岸の伊豆半島にある熱川や稲取、さらに伊豆七島の利島からもはっきりと視認できるほどであったと伝えられています。

炎は一夜にわたり元町集落を焼き尽くし続け、ようやく鎮火したのは翌1月12日の午前6時45分でした。想定外の速さと規模で延焼した結果、元町市街地の約7割、そして大島町全体の約3割もの範囲が焼失するという、極めて甚大な被害をもたらした災害となりました。

甚大な被害状況

この大島大火による直接的な死者は幸いにも一人も出ませんでしたが、物的被害は極めて大規模なものとなりました。全焼した建物は584棟、戸数にして418戸に上りました。公共施設も多数が焼失し、図書館、大島支庁、郵便局、法務局大島出張所、農協などが失われました。焼失した面積は合計で16万5,000平方メートルにも及びました。

この火災により、408世帯、1,273人の島民が家を失い、罹災しました。被害総額は当時の金額で20億7,000万円と推定されており、これは当時の伊豆大島にとって計り知れない経済的打撃となりました。

火災の中心部に位置しながらも、大島町役場や七島信用組合本店は、建物がコンクリート造りであったことが幸いし、類焼を免れることができました。

復旧と社会的反響

東京都は、火災発生の翌日である1月12日、大島町に対して災害救助法を適用することを決定し、被災者への支援に乗り出しました。また、全国各地からも多くの人々から支援の輪が広がり、翌年3月までに集まった見舞金の総額は1億2,880万円に達しました。

大島大火は、その被害の甚大さと特殊性（強風下での急速な延焼、離島での発生）から、当時の日本社会に大きな衝撃を与えました。特に、読売新聞が選んだ1965年の「10大ニュース」の一つに挙げられるなど、全国的に注目された災害でした。この火災の経験は、その後の離島における防災対策や都市計画に影響を与えた重要な出来事として記憶されています。

※この記事は、公開されている情報を元に記述しています。詳細については、当時の公的資料や報道等をご確認ください。

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