大崎正次

大崎 正次（おおさき しょうじ）は、1912年から1996年にかけて活動した日本の東洋史学および天文学史の研究者です。

経歴

1912年9月、東京に生まれた大崎は、東京文理科大学（現在の筑波大学にあたる）で史学科、特に東洋史学を専攻し卒業しました。大学卒業後、研究者としての道を歩み始め、東京大学史料編纂所の所員を務め、また日本学士院の嘱託としても活動しました。その後は教育の場に移り、東京都立九段高等学校で教諭として教鞭をとりました。

天文学史研究

大崎が特に情熱を注いだのは天文学史、とりわけ日本の伝統的な天文学の研究でした。若い頃から天文学に関心を寄せ、特に中学生時代には、当時著名な天文研究者であった野尻抱影や神田茂といった師に恵まれ、天体観測や星の世界に深く親しんだと言われています。

日本の天文方に関する研究と史料編纂

大崎は日本の天文学史、特に江戸時代に公務として天体観測や暦の作成を担った専門家集団「天文方」に関する研究に多大な貢献をしました。彼が編纂した『天文方関係史料』は、天文方の活動を示す貴重な史料群を集成したものです。この史料集には、「天文方代々記」をはじめとする重要な文書が、原文を忠実に再現した翻刻版として多数収められており、日本の近世天文学史研究に不可欠な基本文献の一つとなっています。

神田茂との共同作業

日本の天文学史研究の基礎を築いた神田茂の研究にも深く関わりました。神田茂編『日本天文史料』の編纂においては、広瀬秀雄とともにその史料調査に大きく貢献しています。

『近世日本天文史料』の刊行

さらに、近世日本の天文史料の集成にも重要な役割を果たしました。神田茂が生前に作成した17世紀以降の天文史料リストの草稿が古書店で偶然発見された際、大崎らはこれを譲り受け、長年の研究に基づいて整理・増補を行い、『近世日本天文史料』として刊行しました。この逸話は、同書の序文や日本天文学会の機関誌『天文月報』に寄せられた書評にも記されており、資料収集にかける研究者の熱意と偶然の出会いが結実した事例として知られています。

中国星座の研究

日本の天文学史に加え、中国の伝統的な天文学、特に星座体系に関する研究も精力的に行いました。その成果は、1987年に刊行された『中国星座の歴史』としてまとめられています。この著作は、古代中国における天体の観測方法や星座の分類、それが文化や思想に与えた影響などを包括的に論じたものであり、この分野における主要な参考文献の一つとなっています。

その他の活動

学術研究の傍ら、趣味として陶芸にも深く打ち込んでいたことが知られています。

晩年

1996年（平成8年）7月23日、83歳でその生涯を閉じました。

主要著作・編纂書

大崎正次が関わった主な著作・編纂書は以下の通りです。

大崎正次（編）『天文方関係史料：神田茂先生喜寿記念』、私家版、1971年。
『中国の星座の歴史』、雄山閣出版、1987年。
* 大崎正次、他（編）『近世日本天文史料』、原書房、1994年。

これらの著作は、日本の天文学史および東洋の天文学史研究において、今日でも高く評価されています。

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