大嵩禮造

大嵩 禮造（おおたけ れいぞう、1934年 - 2003年1月7日）は、日本の洋画家です。独立美術協会会員として活躍するとともに、鹿児島市立美術館館長や鹿児島大学名誉教授などを務め、郷土の美術振興と後進の育成に多大な貢献をしました。

生い立ちと画家への道

鹿児島県鹿児島市に生まれた大嵩禮造は、父である洋画家・商業デザイナーの大嵩双山の影響を受け、幼い頃から芸術に触れる環境で育ちました。鹿児島県立甲南高等学校在学中には美術部に所属し、鮫島梓の指導を受けました。高校2年生で早くも南日本美術展に入選を果たし、画家としての才能の片鱗を見せました。

1958年に鹿児島大学教育学部美術科を卒業。翌1959年の第14回南日本美術展では、出品作「花の碑」で県知事賞（最高賞）を受賞し、その実力が高く評価されました。

パリでの研鑽と独立展での活躍

南日本美術展での最高賞受賞を機に、大嵩は初の鹿児島県海外美術派遣留学生として選ばれ、1960年に渡仏しパリで研鑽を積みました。この留学中、審査委員長を務めた海老原喜之助の紹介状を持って藤田嗣治のもとを訪れ、時代の潮流に悩みながらも創作を続ける巨匠の姿に触れ、自身の絵を追求する決意を一層固めたといいます。

帰国後、1962年からは独立展への出品を開始します。1973年には独立奨励賞を受賞。その後も独立展で入選・入賞を重ね、1988年の第56回独立展で栄誉ある独立賞を受賞しました。これらの功績が認められ、1989年には独立美術協会の会員となりました。また、独立展以外にも鹿児島芸術文化奨励賞など、数々の賞を受賞しています。

教育者・地域美術の牽引者として

大学卒業後は高校教諭を務めた後、1965年に母校である鹿児島大学に指導者として招かれ、1977年には教授に就任しました。教育者としても熱心に指導にあたる傍ら、1979年には文部省在外研究員として再びパリに留学し、自身の制作活動にも刺激を受けました。鹿児島大学教授として長く教鞭をとった後、2000年に退官し名誉教授の称号を得ました。

教育活動と並行して、郷土の美術振興にも尽力しました。鹿児島県美術協会の会長を務めたほか、1992年から1999年まで南日本美術展の審査員を務めるなど、地域の美術家たちの育成と発表の場の充実に貢献しました。

作品と画風

大嵩禮造の画業は、そのテーマや作風によって大きく四つのシリーズに分類されます。ヨーロッパ留学前後から手掛けられた「碑」シリーズ、抽象的な空間構成を追求した「グラスボックス」シリーズ、抽象と具象が溶け合った「ポートレート」シリーズ、そして自身の原風景や内面を見つめ直した「回帰」シリーズです。

作品は一貫して白と青を基調とし、半抽象的な空間構成を基本としながら、人間の喜びと悲しみといった普遍的な感情を深く追求しました。その画風は思索的で透明感があり、無駄な感情表現を削ぎ落とし、抑制されたフォルムの中に強い思想性や内面世界を引き出そうとするものでした。

晩年と逝去

鹿児島大学退官後も精力的に活動を続け、2002年6月には鹿児島市立美術館の館長に就任しました。しかし、同年10月に入院し、翌2003年1月7日、脳腫瘍のため惜しまれつつ逝去しました。

芸術家としての卓越した才能に加え、教育者、そして地域美術振興への献身によって、大嵩禮造は鹿児島における美術界に大きな足跡を残しました。彼の作品は今も多くの人々に感銘を与えています。洋画家として活躍した父・双山、グラフィックデザイナーの弟・文雄、洋画家の前妻・沢井祥など、芸術家を多く輩出した一家に生まれたことも、彼の芸術活動の背景として特筆されます。

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