海老原喜之助

海老原喜之助：鮮やかな青の画家

海老原喜之助（1904年9月13日-1970年9月19日）は、20世紀を代表する日本の洋画家の一人です。鹿児島県生まれの彼は、大正末期から昭和にかけて、フランスと日本という二つの地で精力的に活動しました。

パリ時代と鮮烈な青

19歳の時、単身渡仏した海老原は、パリで藤田嗣治に師事。才能を開花させ、早くも二科展やサロン・ドートンヌに出品、入選を果たします。その後、フランスの画商と契約を結び、数々の作品を制作しました。特に彼のトレードマークともなった鮮やかな青は、この頃からすでに用いられ始めていました。「エビハラ・ブルー」と呼ばれるその青は、見る者の心を奪う独特の輝きを放っています。初期の作品には、フランドル絵画の影響も見て取ることができ、青を基調とした雪景の連作も生み出しました。

日本での活躍と戦後の変貌

1934年に帰国した海老原は、日本で初個展を開催。独立美術協会会員となり、独立展に出品を続けました。戦争画も手掛けた彼は、日本大学専門部芸術科の講師を務める傍ら、再婚、転居を経験します。戦争末期には熊本県に疎開、終戦後は絵筆を一時的に置く期間もありました。

しかし、1950年には南日本文化賞を受賞、翌年には海老原美術研究所を設立し、画業を再開します。戦後の作品には、パリ時代の作品とは異なる、より原色に近い鮮やかな青が用いられています。また、色彩をモザイク状に配置するなど、抽象的な画面構成の作品も見られるようになります。晩年には、空間構成と色彩の配置をより単純化することで、新たな表現に挑戦しました。

馬を愛した画家

海老原は生涯を通して馬を愛し、多くの作品で馬をモチーフに用いています。彼の描く馬は、力強さや美しさだけでなく、どこか人間的な感情までも感じさせる、独特の存在感を放っています。

晩年と死

1960年代後半からは断続的に渡仏し、師である藤田嗣治の葬儀を取り仕切るなど、後進の育成にも尽力しました。ヨーロッパのロマネスク美術にも触れ、創作活動を続けました。しかし、1970年、パリで癌のため死去しました。享年66歳。

作品と評価

海老原の作品は、東京国立近代美術館、熊本県立美術館、北九州市立美術館をはじめとする多くの美術館に収蔵されています。彼の鮮やかな青と、力強い表現は、多くの鑑賞家を魅了し続けています。晩年に至るまで、彼は常に探求を続け、独自の画境を開拓しました。

受賞歴

1923年：第10回二科展入選
1924年：サロン・ドートンヌ入選
1950年：第1回南日本文化賞受賞
1955年：第3回日本国際美術展佳作受賞
1957年：国立近代美術館賞受賞
1959年：第5回日本国際美術展最優秀賞受賞
1964年：芸術選奨文部大臣賞受賞

代表作

『姉妹ねむる』(1927年)
『港』(1927年)
『ゲレンデ』(1930年)
『雪山と樵』(1930年)
『曲馬』(1935年)
『ポアソニエール』(1935年)
『青年』(1941年)
『殉教者』(1951年)
『船を造る人』(1954年)
『靴屋』(1955年)
『燃える』(1957年)
『蝶』(1959年)
『雨の日』(1963年)
『男の顔』(1965年)
『合掌』(1965年)
* 『サーカス』(1970年)

海老原喜之助は、独自の青と馬をモチーフにした作品で、日本の洋画界に大きな足跡を残した画家です。彼の作品は、今もなお人々の心を捉え、未来へと語り継がれていくことでしょう。

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