大廻小廻山城

大廻小廻山城（おおめぐりこめぐりさんじょう）とは

大廻小廻山城は、現在の岡山県岡山市東区に位置する、古代に築かれた山城です。この城は、大廻山と小廻山の山頂にまたがって築かれており、その独特な構造から、神籠石系の山城に分類されています。城跡は2005年に国の史跡に指定され、その歴史的価値が認められています。

城の概要

この山城は、標高199メートルの小廻山山塊に築かれており、山頂部を中心に土塁が巡らされています。特に注目すべきは、3ヶ所の谷部に設けられた石塁による水門です。これらの水門は、城の防御機能を高めるために重要な役割を果たしていたと考えられます。

城の正確な築城時期は不明ですが、出土した土器片から、7世紀後半、白村江の戦い前後の時期に築かれた可能性が高いとされています。この時期は、朝鮮半島情勢が緊迫し、日本各地で防衛のための山城が築かれた時代です。

歴史

古代

大廻小廻山城は、文献に記録が残っていないため、築城の詳しい経緯や目的は謎に包まれています。しかし、その立地から、古代の山陽道や備前国府、そして岩間津といった交通の要衝を監視する役割を担っていたと考えられます。

この地域は、古代には備前国上道郡日下郷に属しており、大廻小廻山城は、この地域の防衛拠点として重要な役割を果たしていたと推測されます。岡山県内には、他にも鬼ノ城などの古代山城が存在しており、当時の政治情勢を考える上で重要な手がかりとなっています。

中世・近世

中世になると、城域内から多数の線刻石仏が出土しており、常楽寺という寺院が宗教施設として利用していたことが推測されます。この常楽寺は、平安時代後期に開基されたと伝えられており、山号である「築地」は、山城の遺構を意識して名付けられたと考えられています。

江戸時代には、この一帯は常楽寺の所有地となり、山論の記録にも「築地山四天屋敷之古跡」としてその名が残っています。しかし、中世以降、城としての機能は失われ、その記憶も一時的に薄れていったと考えられます。

近代以降

近代に入ると、小廻山は国有林となりました。1940年には、荒木誠一によって古代山城の可能性が指摘され、戦後には長光徳和が再提起しました。

1973年の埋蔵文化財分布調査で古代山城であることが確認され、1984年から1988年にかけて岡山市教育委員会による発掘調査が行われました。そして2005年、その歴史的価値が認められ、国の史跡に指定されました。

遺構

城壁

城壁は、山頂の尾根伝いに全長3.2キロメートルにわたって巡らされています。その面積は約38.6ヘクタールに及びます。城壁は、基本的には土塁で構成されており、谷部には石塁の水門が設けられています。土塁は、列石の上に版築によって築かれています。

水門

水門は、3ヶ所存在しており、「一の木戸」、「二の木戸」、「三の木戸」と呼ばれています。これらの水門は、いずれも石塁で築かれており、城の防御機能を高める上で重要な役割を果たしていました。最も状態が良い一の木戸は、現状で4段の石積みが残っていますが、築造当初はさらに3〜4段の石積みと土塁が伴っていたと推測され、その規模は幅6メートル、高さ5〜6メートル程度であったと考えられています。

その他の遺構

城門の位置は未確定ですが、一の木戸の北縁や三の木戸のそばなどが候補地として挙げられています。また、建物跡はまだ発見されていませんが、小廻山山頂部の平坦地などに存在した可能性が指摘されています。小廻山山頂は城内で最も標高が高いため、烽火台が設置されていた可能性も考えられます。

文化財

国指定史跡：大廻小廻山城跡（2005年3月2日指定）

現地情報

所在地：岡山県岡山市東区草ヶ部・瀬戸町観音寺・瀬戸町笹岡
交通アクセス：JR山陽本線 瀬戸駅から徒歩約50分
周辺：両宮山古墳群、両宮山古墳（国の史跡）、備前国分寺跡（国の史跡）、備前国分尼寺跡

まとめ

大廻小廻山城は、古代日本の山城の中でも特に謎が多く、その詳細な歴史や役割については未解明な部分が多いです。しかし、その独特な構造や周辺の古代遺跡との関連性から、当時の政治情勢や文化を知る上で非常に重要な史跡であることは間違いありません。今後の調査によって、この山城の新たな側面が明らかになることが期待されます。

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