古代山城

古代山城とは

古代山城とは、7世紀後半から8世紀にかけて、主に西日本に築かれた山岳を利用した軍事施設群の総称です。かつては「朝鮮式山城」や「神籠石」と区別されていましたが、近年の研究により両者の境界が曖昧になりつつあり、まとめて「古代山城」と呼ばれることが多くなっています。

概要

これらの山城は、飛鳥時代から奈良時代にかけて、対朝鮮半島や中国との緊張関係の中で築かれました。文献に記載のあるものは「朝鮮式山城」、記載のないものは「神籠石系山城」として区別されてきましたが、発掘調査の結果、両者の区別が必ずしも明確ではないことが判明しました。

山城は、山全体を防御施設として活用し、頂上付近を土塁や石塁で区画しています。大規模なものでは、その外郭線が数キロメートルにも及ぶものもあります。古代においてその役割を終えた後、一部は中世に山城や寺社として再利用されています。

分類

古代山城は、その構造や築造背景から、大きく分けて以下の3つに分類されます。

狭義の朝鮮式山城

「朝鮮式山城」という名称は、663年の白村江の戦いでの倭軍敗北後、百済の将軍の指導の下で築かれたことに由来します。『日本書紀』には、665年に百済の将軍たちが長門や筑紫に城を築いたと記録されています。これらの城は、唐や新羅からの侵攻に備えるために築かれたと考えられています。

文献には、高安城、茨城、常城、長門城、屋嶋城、大野城、基肄城（椽城）、鞠智城、金田城、三野城、稲積城の計11ヶ所が記録されていますが、このうち長門、茨、常、三野、稲積の5ヶ所は所在地が不明です。遺構としては、石塁、土塁、建物跡などが確認されています。

中国式山城

「中国式山城」または「大陸系山城」は、文献に記録されているものの、朝鮮式山城には含まれない怡土城（福岡県糸島市）を指します。築城時期は8世紀中頃で、唐の安禄山の乱や藤原仲麻呂による新羅征討計画といった背景が考えられています。怡土城は、吉備真備が入唐時に得た知識を活かして築かれたとされています。

朝鮮式山城が攻撃側から城内を見せない構造であるのに対し、怡土城は山の斜面にたすき状に築かれ、城内が見通せる構造になっています。この構造から、より攻撃的な性格を持つ城と考えられています。

神籠石系山城

「神籠石系山城」という名称は、最初に発見された高良山の遺跡に由来します。各地で同様の列石や石塁の遺構が見つかり、「霊域説」と「山城説」の間で議論がなされましたが、現在では山城跡が定説となっています。神籠石系山城は、百済の技術を基に築かれたと考えられ、「広義の朝鮮式山城」に含められることもあります。

現在までに17ヶ所が発見されており、遺構の特徴としては、切石を並べた列石を土塁の土留め石とする点や、列石区画の内側には建物跡が見られない点が挙げられます。これらの山城は年代を示す遺物が少ないため、正確な築造年代は不明ですが、7世紀後半頃と推測されています。また、文献に記載がないため、山中の踏査によって発見されることが多いのも特徴です。

一覧

（一覧表は省略）

年表

（年表は省略）

脚注

（脚注は省略）

参考文献

斎藤忠「神籠石」『国史大辞典』吉川弘文館。
亀田修一「朝鮮式山城」『日本古代史大辞典』大和書房、2006年。
磯村幸男 著「西日本の古代山城」、森公章 編『古代国家の形成』吉川弘文館〈史跡で読む日本の歴史3〉、2010年。
「第45回福岡県地方史研究協議大会 福岡県の古代山城」 (PDF) 福岡県立図書館郷土資料課、2011年
阿部義平『日本古代都城制と城柵の研究』吉川弘文館、2015年。
向井一雄『よみがえる古代山城 -国際戦争と防衛ライン-』吉川弘文館〈歴史文化ライブラリー440〉、2017年。

関連項目

神籠石
城柵
大宰府
水城

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