大戴礼記

『大戴礼記』（だたいらいき）は、中国の漢代に戴徳（たいとく）が著した儒教関連の論文集です。戴徳の甥である戴聖（たいせい）が著した『礼記』（小戴礼記）と区別するために『大戴礼記』と呼ばれています。「大戴礼」と略されることもあり、「大戴」は「ダタイ」と発音されることが多いです。

本書は、古代中国の礼に関する様々な文章を集めたもので、体系的な構成ではありません。当初は全13巻85篇からなっていましたが、現在ではその多くが失われ、40篇のみが伝わっています。これらの篇には、政治、社会、倫理、思想など、幅広いテーマが扱われています。

『大戴礼記』の中でも特に有名なのが、「三従七去」です。これは、儒教社会における妻の役割を示す教えで、本命篇に記載されています。「三従」とは、女性が幼少期は父親、結婚後は夫、老後は息子に従うべきとする考え方です。「七去」は、夫が妻を離縁できる7つの理由を指し、夫の親に逆らう妻、子を産まない妻、嫉妬深い妻、不貞な妻、重い病気を持つ妻、口うるさい妻、盗みを働く妻です。

これらの教えは、中国社会における父系家族制度と深く結びついており、女性の社会的地位や役割を規定する上で大きな影響力を持っていました。しかし、現代の視点から見ると、女性を一方的に従属的な存在として捉えていると批判されることもあります。

『大戴礼記』の日本語訳としては、明治書院から刊行されている栗原圭介訳『大戴礼記』（新釈漢文大系）が知られています。この訳注は、原文の細かな解説と詳細な語釈を付しており、本書を理解する上で非常に役立ちます。また、『孝経』の日本語訳に『曾子』十篇を併録した書籍も見られます。

『大戴礼記』は、古代中国の思想や社会制度を知る上で貴重な資料です。特に儒教の思想や、中国における女性の地位を考える上で重要なテキストであり、現代においてもその内容が議論の対象となっています。本書は、歴史学、思想史、社会史、そしてジェンダー研究など、多様な分野の研究者にとって重要な文献となっています。多様な視点から考察することで、『大戴礼記』の持つ意味をより深く理解できるでしょう。単なる歴史的文献にとどまらず、現代社会を考える上でも示唆に富む内容が含まれていると言えるでしょう。

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